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第47話:教会の子供たち13
ユァンはハラハラしながらも、前に並ぶ子供に倣 ってお菓子の袋をさっそく覗 いた。
手作りのクッキーか何かかと思ったら、それは市販のチョコレートやキャンディだった。自給自足の修道院で、こんなものを目にする機会はめったにない。当然、養護院の子供にとってもこういうお菓子は貴重だ。それからアニメ映画も。
ユァンはお菓子の袋を手に、スクリーンの方へ目を向けた。確かこれは少し古い作品だが世界的に有名なものだ。童話を題材にしたロマンスと勧善懲悪 の物語だったと思う。
スクリーンの前には子供たちが肩を寄せ合うようにして座っていた。オードブルの皿から適当なものを取ってきて、食べながら観ている子供もいる。
ユァンは微笑ましい思いでその様子を見守った。
本当にただのパーティだ。神父や修道士たちは子供たちがくつろげるよう静かに見守っている。テーブルの上に気を配り、空いた皿を運んでいく修道士の姿を見送り、ユァンはほっと息をついた。
それから映画のスクリーンがエンドロールを映し始めた頃。
すっかり暗くなった庭が解放され、子供たちに手持ち花火が与えられた。それも養護院の子供たちにとっては、あまりお目にかかれないもので。多くの子供たちがさっそく外に出て、手持ち花火に火をつけた。
広間に残ってまだ、デザートや飲みものを口にしている子もいる。みな思い思いの行動をしていた。
そんな中、ユァンは一人の子供のことが気になっていた。
すらりと手足の長い男の子だ。彼はもじもじしながら何度も入り口を振り返り、手持ち無沙汰のようにも見える。
(トイレ? それとも帰りたいのかな?)
世話をしている修道士たちが気づく様子もないので、ユァンは思い切って彼に声をかけてみた。
「ねえ、どうしたの?」
「あ、えーと……」
ウサギの仮面の奥にある瞳が、戸惑い気味にユァンを見る。
仮面のせいではっきりとは分からないけれど、ユァンの知っている子ではなさそうだ。ほっそりとした顔の輪郭 、仮面の隙間から見える目はくっきりとしたアーモンド型で、きっときれいな子なんだろうという印象を抱かせた。ただその目は怯 えたような色をしている。
「もう帰らなきゃ」
少年がつぶやくように言う。
「え……?」
「神父さまに呼ばれると、面倒なことになる……」
「面倒なことって?」
彼はユァンの問いには答えずに、目だけで辺りを見回した。ユァンの胸にも不安が渦巻く。
(やっぱり……ペティエ神父には何かあるの?)
「一緒に帰ろう、きみも一人でいない方がいい」
少年が思いのほか強い力でユァンのそでを引っ張った。
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