76 / 116
第76話:獅子と牝山羊19
「あっ……ふうん……」
大きくて固い手のひらに包まれると、それだけで全身の力が抜けてしまう。立てていたひざが崩れそうになったところで、脚を開いて彼のひざの上に跨がる形にさせられた。
見下ろすと、さくらんぼみたいに熟した自分の先端が目に入る。
「やだ……こんなの恥ずかしい……」
恥ずかしいのに、先端からは蜜がしたたっていた。
「俺はもう体の隅々まで、ユァンのことは知ってるつもりだけどな」
蜜を大事そうにすくい取る、バルトロメオの指先は優しかった。彼はすくい取ったものを塗り広げ、それから指を自分の口にも持っていく。
「ああ……これ直接舐めちゃ駄目ってなんなんだ。こんなん我慢させられたら、逆にソドミー上等ってなるだろ」
うわずった声で言われて、ユァンもそれに同意したくなってしまう。
(僕もバルトが欲しい。内側でたくさん触れ合いたい)
我慢できなくなって、指を舐めたあとの彼の唇をキスで塞いだ。
「は……ユァン」
彼からも唇を求めてくる。舌先が触れ合い、ユァンはそれを逃がさないよう首の角度を固定した。
その間にもバルトロメオの利き手がユァンの下半身を翻弄する。さっきまでは優しく先端を撫でていたのに、今は全体を包み込み、大胆に擦り上げていた。
「んっ、んっ、ふっ……」
キスで閉じ込めきれない喘 ぎが、くぐもった声となって口の端からあふれ出る。
(ああ、もう、出ちゃう!)
限界を伝えたいけれど、キスに唇を塞がれていてそれができなかった。このままだときっと、バルトロメオの服を汚してしまう。そう思いユァンは、とっさにそこへ自分の手を持っていった。
「……ああっ。はあっ、くっ……」
恥ずかしい飛沫の大部分を、なんとか手のひらで受け止められた。そう思ったのに……。
「えっ……バルト!?」
手首をつかまえられ、汚れた手のひらをペロペロと舐められる。
「ちょっと……待っ……」
腕を引っ込めようとしても駄目だった。
「これくらい寄越しなさい。俺が満たされない」
バルトロメオは当然の権利みたいに言ってそれを舐め続ける。
(こんなので、満たされるの……? いったい何が?)
ユァンにはよく分からない。
けれどまぶたを伏せた彼の表情には、なんともいえない幸せの気配が漂っていた。
ともだちにシェアしよう!