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第76話:獅子と牝山羊19

「あっ……ふうん……」  大きくて固い手のひらに包まれると、それだけで全身の力が抜けてしまう。立てていたひざが崩れそうになったところで、脚を開いて彼のひざの上に跨がる形にさせられた。  見下ろすと、さくらんぼみたいに熟した自分の先端が目に入る。 「やだ……こんなの恥ずかしい……」  恥ずかしいのに、先端からは蜜がしたたっていた。 「俺はもう体の隅々まで、ユァンのことは知ってるつもりだけどな」  蜜を大事そうにすくい取る、バルトロメオの指先は優しかった。彼はすくい取ったものを塗り広げ、それから指を自分の口にも持っていく。 「ああ……これ直接舐めちゃ駄目ってなんなんだ。こんなん我慢させられたら、逆にソドミー上等ってなるだろ」  うわずった声で言われて、ユァンもそれに同意したくなってしまう。 (僕もバルトが欲しい。内側でたくさん触れ合いたい)  我慢できなくなって、指を舐めたあとの彼の唇をキスで塞いだ。 「は……ユァン」  彼からも唇を求めてくる。舌先が触れ合い、ユァンはそれを逃がさないよう首の角度を固定した。  その間にもバルトロメオの利き手がユァンの下半身を翻弄する。さっきまでは優しく先端を撫でていたのに、今は全体を包み込み、大胆に擦り上げていた。 「んっ、んっ、ふっ……」  キスで閉じ込めきれない(あえ)ぎが、くぐもった声となって口の端からあふれ出る。 (ああ、もう、出ちゃう!)  限界を伝えたいけれど、キスに唇を塞がれていてそれができなかった。このままだときっと、バルトロメオの服を汚してしまう。そう思いユァンは、とっさにそこへ自分の手を持っていった。 「……ああっ。はあっ、くっ……」  恥ずかしい飛沫の大部分を、なんとか手のひらで受け止められた。そう思ったのに……。 「えっ……バルト!?」  手首をつかまえられ、汚れた手のひらをペロペロと舐められる。 「ちょっと……待っ……」  腕を引っ込めようとしても駄目だった。 「これくらい寄越しなさい。俺が満たされない」  バルトロメオは当然の権利みたいに言ってそれを舐め続ける。 (こんなので、満たされるの……? いったい何が?)  ユァンにはよく分からない。  けれどまぶたを伏せた彼の表情には、なんともいえない幸せの気配が漂っていた。

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