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第100話:罪と愛18
(あの動画のこと、バルトに言えなかったな。言うべきかどうかも分からないけど……)
ユァンはため息をつきながら、宿舎の部屋のドアをくぐった。
動画のことはバルトロメオの将来にも関わる大問題だが、いま言うべきかどうか、悩ましい。ユァンがあの動画のために行動を起こすと知ったら、きっと彼は止めるだろうし……。
「はあ……」
もう一度ため息をついたところですぐそばに人の気配を感じ、ユァンはそちらへ目を向けた。
「デカいため息だなあ」
ルカだった。彼はベッドに横になり、壁に足のかかとを預けるというおよそ修道士らしからぬ格好をしている。
「ルカ、戻ってたんだ……」
「俺はユァンみたいに仕事熱心じゃないからな」
そう言ってからルカは、勢いよく身を起こしてユァンを見た。
「っていうかお前は仕事じゃなくて逢い引きか」
「えっ!?」
ルカが部屋の窓を指差す。
「見えてたぞ。下で抱き合ってるとこ」
「……!」
ユァンは反応に困り、とりあえず自分のベッドに腰かけた。
「気をつけろよ。他に誰か見てるんじゃないかって、俺の方が気を揉んだ」
「ごめん……」
ユァンがそれ以上何も言えずにいると、ルカは自分の髪をかき混ぜながら聞いてくる。
「どうするつもりなんだ? あいつとのこと」
「え……?」
「だってあいつ、秘密調査員かなんかなんだろ? そのうちいなくなる」
「ちょと待って! なんでっ、そのこと……」
大きな声が出てしまい、ユァンは慌てて自分の口元を押さえた。ルカが呆れたようにため息を漏らす。
「なんでって、さすがに察しがつく。ただの修道士見習いには見えないし、あいつが何やら嗅ぎ回ってるところを何度も見た」
ユァンは心の中で、友の察しのよさに舌を巻いた。
「いなくなるならそれは仕方ないよ。僕にどうこうできることじゃない。ただ僕は、バルトの力になるどころか、足を引っ張ってばかりいることが心苦しい」
時計を見ると、時刻はそろそろ就寝前の祈りの時間だ。ユァンは胸のロザリオを弄びながら、心のうちを打ち明けた。
ルカは慰めるでもなく淡々と返してくる。
「あいつが勝手に来て勝手にいろいろやってんだろ。それなのにユァンに気に病むべきことがあるとも思えない」
「それが大ありなんだよね……」
「何があんの?」
「……え?」
向かいのベッドにいるルカと目が合い、ユァンはまたもや言葉に詰まってしまった。
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