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第112話:罪と愛30
熱を持った唇が移動し、今度はユァンの肩をかすめるように滑る。
「きれいな肌だな。今まで闇の中か、山羊小屋の小さな灯りの下でしか見たことがなかった」
この部屋の電灯の下では夜も、晴れた日の午前の祈りの時間くらいには明るかった。
「あっ……」
彼の濡れた唇が、ユァンの胸の尖 りにぶつかった。
「ルカはこんなことしない」
「本当に? 同室だったなら裸を見せたりもしただろう。肌が触れ合うことだってあったかもしれない」
唇の先を使ってそこを挟まれる。
「んっ……でも僕だって……性的な行為とそうじゃないことくらい見分けられる」
「そうか、だったらこれは?」
今度はベタリと舌が這 った。
「ふっ……バルトは……やらしい意味で、やってる……」
「正解。ここにユァンを泊めておきながら、何日も手を出さなかった俺を褒 めてほしい」
彼は胸元から顔を上げ、上目遣いにこちらを見上げる。切れ長の瞳を取り囲む、濡れ羽色のまつげがなんともいえない色気を放っていた。
「我慢してたの?」
ユァンはため息交じりに聞く。
「それはしてたよ。アンタが長旅と、それから取り調べのせいで疲れているだろうと思って誘わなかった。けど……今夜はさすがに無理だな」
バルトロメオはユァンの肌を弄びながら、着ているものを取り払っていった。
上をするすると脱がされ、それから寝間着の下にも手がかかる。
「早く、アンタと裸で抱き合いたい」
胸にかかった吐息が熱かった。
「ああっ……」
ユァンの体も疼 き始める。胸だけでなく下半身もすでに熱を宿していて、下着を下ろされた時にはピンと跳ね上がって主張した。
バルトロメオが笑ってそこに手を触れる。
「胸だけでこんなになるのか」
「だって……」
「ユァンのこの体、本当に好きだ」
「僕は淫らで恥ずかしい」
「淫らな体が嫌いなやつなんてそうそういないだろう」
「そんなわけっ、あ、やん」
バルトロメオが床にひざを突き、ユァンの分身を口に含んだ。
「人の、ありのままの姿は美しい。特にアンタのこの体には……神が宿っているとしか思えない」
性器の根元に口づけを降らせながら、彼はそんなことを言う。
「バルトそれ、恥ずかしい」
彼の肩に両手でつかまって、ユァンは体の震えをこらえていた。立ったままこんなことをされるのは初めてだ。
「ねえ、バルト……もう、ベッドに行きたい」
早々に音を上げると、バルトロメオがこちらを見上げてニヤリと笑った。
「アンタがそう言ってくれるのを待っていた」
たくましい腕で抱き上げられ、寝室まで運ばれる。
バルトロメオはベッドにユァンの体を預けると、一時も離れたくないというように体の一部を触れさせたまま服を脱いだ。
ユァンの胴体を内股に挟んたまま、彼は伸び上がってシャツを脱ぐ。
(あ……)
ユァンは彼の、厚みのある上半身に見惚れていた。脱いだシャツがベッドの縁に落とされて、微かな汗の香りが鼻に届く。ユァンはそれにもうっとりしてしまう。バルトロメオの、雨上がりの森のような匂いが好きだった。
自分から彼の首に抱きついて、その匂いを嗅ぎにいく。
「ユァン、くすぐったい」
「だってバルト、好き」
彼はユァンを首にまとわりつかせたまま下も脱いだ。
(あっ……)
抱きついているユァンの内股に、バルトロメオの硬くなったものがぶつかった。それでユァンは何も言えなくなる。早く欲しいという気持ちと、久しぶりの行為にほんの少し怯える気持ちと。
ユァンの緊張が、バルトロメオにも伝わったらしい。彼はユァンの背中を優しく撫で、あぐらをかく脚の上にゆっくりと座らせた。バルトロメオの端正な顔がユァンの目の前に来る。
「ユァン、俺もアンタが好きだ。アンタとひとつになれると思うと、天にも昇る心地がする」
「……っ、僕もだよ」
熱っぽい眼差しで見つめられ、ユァンは自分から彼の唇を求めた。
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