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一、運命的な失言②
「でも俺、グーが心配だよ。俺がいないと、スキンなしで女のひと抱いちゃうだろうし」
「うっせーな。俺は俺を受けとめてくれる穴さえあれば、幸せなんだよ。お前みたいに力なんてなくても幸せになるって」
「そんなこと言って。……ね、一緒に王都行こう? グーなら城でいくらでも仕事見つけられるよ」
なんで村で働かなくて生きていけてるのに、城で働くのさ。
「無理無理。良いって。俺はこの村で大丈夫」
「グーも王都で戦いのトレーニングしようよ。魔王の封印が解けたら、こんな村一瞬で無くなっちゃうんだよ」
「だいじょうーぶ。だいじょーぶ。魔王なら、昨日抱いたぜ。お前と違って俺には魔王を喜ばすテクを持ってるから」
「もう、グー!」
「こいつならホントに魔王も抱きそうだよな」
「確かに」
皆、ゲラゲラと好きかって笑うんだけど、酒のせいでそれが楽しくてしかたない。
「おーそうだよ。そう」
「おい、グー」
「魔王なら、昨日抱いたぜ」
酒場全体で笑い声が広がった。
酒が降り注ぎ、辺り一面水飛沫が飛び散る中、不安げなリーと、カウンターで眠たそうにグラスを磨く知らない男以外は、それはそれは楽しそうにしていた。
とっくの昔に魔王の封印が解かれていたとは知らずに。
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