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一、運命的な失言⑤
「ひ!?」
「俺は、自分を倒しに来た、逞しく勇敢で、そして皆に慕われて、自信に満ちた若者を、モンスターで凌辱するのを楽しみで生きてきた魔王だ」
「……えげつないな」
「だから、勇者の力を秘めた奴がいると聞き、触手モンスターをいっぱい用意していたのに。よもや、俺をはばかる奴が居ようとは」
死んだ目でため息をつかれても、どうしていいのか分からない。
ドアを閉めようとしたら、一瞬でドアが卑猥な形の木の棒になったので俺はそれ以上何も出来なくて頷くしかできなかった。
「面白い……」
頼むから面白くないから、放っておいてくれ。
「触手か俺か選べ。お前で遊びたくなった」
選択肢、まじ鬼畜。
「あの、俺よりもイケメンで素敵な人がいますよ」
「うむ?」
俺は両手をさすさすと擦り、ごまを擦るように厭らしい笑顔を向けた。
「勇者の力を持つ、リーなんてどうでしょう? 魔王様には此方の方が抱くのは面白いかと」
面倒だと思った俺は、躊躇なく、幼馴染を売った。
***
「シ、シンシア、ごめんよ、クソジジイからの追手だ」
「えー、玄関でやり合ってた人?大丈夫?」
シンシアが豊満な胸を揺らしながら心配して起き上がってくれたけど、無理やり寝かしつける。
「大丈夫だけど、リーの王都への出発パレードで護衛することになったから行くよ。帰れたら……帰る」
リーを自称魔王に売ることはなんや罪悪感はない。
無いが、女性との一夜をやり遂げなかった罪悪感と槍のように尖った俺の性欲には罪悪感半端ない。
「いいのよ。護衛ならすぐ帰れないわよ。また順番待つわ」
笑顔で見送ってくれそうになったが、また無理やり寝かせた。
起きて、無くなったドアを見たら悲鳴をあげてしまうかもしれないし、自称魔王に会わせたく無かったから。
「準備はできましたよ」
ムスッと言い放つと、死んだ目の魔王は俺を見下ろす。
こいつ、2メートル近くないか? 化け物か?
「200年前、最初の勇者は俺を拒絶した」
「……200年前ねえ」
適当に相槌を打ちながら、リーの出発する村の噴水前に誘導する。
「勇者は俺好みの美男子だったから、一緒に世界を手にしようと誘ったのに俺を封印しようとしやがった。……信じていたのに。俺は愛していたのに。やはりあの時、触手でじっくり何年も快感地獄を味あわせ、次にオークの玩具にしたあと、俺の人形にしておけば」
「モウシワケアリマセン、ヒトリゴトガ、ブッソウデス」
何も聞こえない、何も聞こえない。
「因みに、200年前は自分の事を余(よ)と言っていた。『ふふふ。余の魔剣のごとく高ぶった熱芯で己を貫こう』とか雰囲気格好良いじゃん? 封印から起きた後は私。『私の手でこんなにとろとろにして、なんともあさましい奴ですね』とか雰囲気がちょっと知的かなって」
うわあ。
この自称魔王って人、すげえ早口でなんか恐ろしいこと言ってるし若干中二臭い。
しかも例文がどうみてもホモ臭いけど、勇者にナニしてんだ?
「今の時代は、自分の事を俺と言うのが流行ってるからそう言ってみたがどうかな」
「ステキダトオモイマス」
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