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一、運命的な失言⑩
ああ。触ってみても全く抜けない。
ってことは魔力でやられたってことだ。
こいつ、本当に封印されていた魔王だったらどうしよう。
「さて、あの全くムラムラしない勇者が来る前に俺の城に行くか。茨のツルではなく、城全体が触手で覆われ、なおかつときどき城の床がぬめぬめしているが住めば王都だぞ」
そんな城行きたくない。
「あのう、ちなみに一日一回キスは我慢できるんですが、この指輪の外れる条件は?」
「うーん。考えていなかった。今考える」
くっそが! クーリングオフさえできねえような魔法使ってんじゃねえよ!
「よし。決めた。お前は俺の嫁になるのだからこれがいいな」
「お、お手柔らかにお願いします」
なんだろ。どうせキス以上の事だろーけど、×××とか×○を○○する、とかかな。
「決めた。お前が心から『ら、らめぇぇええ』と言ったら外れるようにしておいた」
最悪じゃねえか。一生つけたままでいいわ。
「じゃあ、外しません」
すると死んだ目が一瞬だけ大きく見開かれた。
「なかなか可愛いことを言うな。俺と離れたくないってことだな」
「目が死んでるくせえにポジティブだなって、どこに行くんだ」
ふわりと簡単に抱きかかえられた176センチ、村一番の美少年、俺。
2メートル確実のホモ魔王は、うきうきと宿の方へ歩き出す。
「さっさとキスしようかと思ってな。あと『らめえ』の練習も兼ねて、ベッドでエッチしよう」
「ま、まじで! それは止めてください」
「『やめて』って喘ぐ時は大体本当は嫌じゃないから、俺はやめないよ」
今喘いでねえんだから、止めとけよ、くそホモ魔王めが。
「さーて。ふたりで合体しながら窓から王都へ行く勇者を見送ろうじゃないか。
100年分の愛をお前に注ぎ込むぞ」
「ぎゃー」
本気で逃げ出したかったが、すでに魔王の指輪をはめられ、ずるずると宿の方へ引っ張られていった。
「……信じられない」
自称魔王は、俺の服を脱がすや否や驚いて尻もちをついていた。
「こんなに綺麗な身体の男を見たことがない」
死んだ目でそんな風にじろじろ見られたらどうしていいのか戸惑う。
がやはり、男の魔王から見ても俺の身体は綺麗なのか。
「この努力をしたこともない様な傷一つない身体、太陽の下で肉体労働したことないような筋肉なしの身体。……ニートだな」
「ニートじゃなくて、女性たちに平等に愛を分け与えるヒモです」
「ヒモ……?」
「ただの紐ではなく、赤い糸の紐です、なんちゃって」
何を言っているのか分からないと、死んだ目で蔑まれた。俺は泣いた。
そんな中、村の中心からワアア―っと歓声が聞こえてきた。
リーが王都へ行くパレードが始まったのだろう。
それなのに俺は幼馴染を選ばず、こうやって魔王の下組み敷かれている。
昨日ついた可愛い嘘のせいで、抱かれてしまいそうだった。
「聞くが男は初めてか」
「聞くまでもないです。男に突っ込む趣味はないです」
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