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一、運命的な失言⑬

「グー、その指輪どうしたの?」 「え、あ、あーっとその抜けなくなった」 「ふうん……。それどっかで見たことあるんだよねえ」 リーは首を傾げつつ指輪から顔を遠ざけたり近づけたりする。 未来の伝説の勇者であるリーには、これが魔王の呪いの指輪だと分かるのかもしれない。 「うーん。これって婚礼の儀式の指輪の様な」 「婚礼!?」 つまりエンゲージリングみたいなやつ? 「……緊張して立たなかったときに、これを下半身のエクスカリバーに差し込むと元気になる、みたいな」 「エクスカリバー建国用の道具かよ!」 指輪にしてるとかありえねえ。 「リー、この指ごと切ってくれ」 「駄目だよ。魔力で取れなくなってるなら、訓練して俺がとってやるからさ」 「リー……」 俺の中で優先順位が果てしなく下にいるのに、優しい。 それなのに俺はなんて最低な奴なんだ。 「でもさっきのバーテンダーさんの方がいいかも。なんか指輪から感じる魔力の波長が同じだよ」 こいつ天然なくせに鋭いって言うか。 生まれ持った性質なのか才能なのか。 「……リー、俺、女性のハレムとかで働けねえかな」 「王都にはハレムないよ。それに王都の王子は傍若無人な変態らしくって未だに独身だって」 「世の中変態だらけだな」 「グーが言うなんて、己の性質をしらないのかな」 何気にきついことを言われたが、先は不安しかない道中をリーと楽しんだのだった。 「王都セーメノーリッバは、大きな壁で覆われていて世界最強の要塞とも言われているんだけど、扉は常に開いているから要塞としての機能は微妙だよ」 「ふーん」 心底どうでも良い話だ。大事なのはそんなことではない。 「それぞれの門に、結界を守ってる美女がいるらしけど」 「うおしゃー! 俄然やる気出てきたわ」 「100歳越えてると思う」 99歳までが範囲の俺は再びその情報の前で死んだ。

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