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二、魔王を倒すにはまず仲間集め!⑤

「は?」 ここは初代勇者チームの拠点でもあり、魔王が入らないように結界をはっている(もう俺が壊しちゃったけど)王都なんだけど。魔王入ってきちゃってるけど。 「ここに住むことにする。もちろんいつ死んでも構わないと思っている以上、いつ殺しに来ても構わないぞ」 殺せるならばな、と魔王は死んだ目で言う。 目だけじゃなくていっそもう、死んでしまえと思う。 世界中が敵で、世界中の悪で、王子にも勇者にも嫌われてるくせに、どうしてそんな敵の中心部に住みたいんだ。 「ふむ。自分の懐に魔王と魔王を抱いた男、そして勇者の印を持つ者、この三人が現れるとは面白い。構わんぞ、三人に部屋を用意しろ」 なんと寛大な王子だろうか。寛大すぎて石を投げてやりたい。 「いや、部屋は俺とこの者は一緒で構わん。一緒の時の方が隙ができるぞ」 「そうだな。そうしよう」 俺の意見は聞かれることなく、魔王とは一緒の部屋になりました☆ってか。 最低じゃん。俺の処女バイバイ。 「王子、お待ちください!」 そうだ。この状況で発言力もあり魔王に全く相手にされていないこの勇者さまならば、この理不尽な状況を覆せるはず。 「グーはお二人のモノではありません。本人にも意志があります。可哀相です」 そーだ。そーだ。 「二人が本当に愛し合ってるならば、魔王ももう世界を滅ぼしたりしないはずですし、そんな二人をここで監視だなんて酷すぎます」 何勘違いしてんの? さっきから俺たちが愛し合ってる雰囲気あった? 世界なんて、いつ死んでも良いから滅ぼすのはいつでもできるけどしないの、って魔王さっきから言ってるじゃん、悪じゃん。 「お前、名前は?」 「グイード・アロンソ・デ・メネセスです。ウーケリッバ村、メネセス男爵の息子です」 「ふむ。名前と、まあ確かに顔は悪くない」 じろじろ見るなと言いたいところだが、今の状況で言ったらこいつの座ってる男みたいな理不尽な扱いを受けそうだ。 「お前、本当に魔王を抱いたんだな?」 俺に、兵士たち全員の視線が向けられる。 これって何を言えば正解なんだよ。正直に言えば助かるのか。 「抱いてな―――――あああああああ」 正直に言おうとした俺の口は、突然開いたまま閉じれなくなった。 動かせれないと喋れない。 あがががと、口を閉じようと慌てている俺の横で慌ててウロウロしているリー。 すると、急にユージン王子が目を大きく見開いた。 「皆、見よ! あの者の口を見よ」 ――は? 俺の口がなんなんだ。 その時、少し距離を置いていた魔王がにやりと口だけ笑ったような気がした。 相変わらず目は死んだままで。 「グー、それ……」 口の中を覗いたリーが頬を染めてから、カバッと両手で顔を覆い背を向ける。 何なんだよ。口の中が何なんだ。 もう一度魔王の方へ向くと、魔王が手を伸ばして来た。 そして開いたままの口の中から、何かを引っ張った。 「前歯と前歯の間に、これが挟まっていたぞ」 魔王が俺の目の前に突き出したのは、先ほど話していたチリチリな陰毛だった。

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