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二、魔王を倒すにはまず仲間集め!⑦
「俺を拒絶する気か」
ゴロゴロと雷が鳴り出すとともに、魔王の顔が憤怒で険しくなっていく。
死んだ顔以外もできるのか。こっちの顔はまあ悪くない。
そんな思いを吹き飛ばすかのように、俺の頭の中では何故か走馬灯のように村のレディたちの顔が浮かんでは消えていく。
どうやら魔王を怒らせた瞬間、俺の本能が死を予感させたようだ。
それほど、この目の前の死んだ目の男は要注意人物なのだ。
「その指輪があるにも関わらず俺を拒絶するというのか」
(ひい)
どうしよう。暗黒の雲が空に立ち込めてきた。
謝るか。いっそ謝って楽になってしまおうか。
世界<俺の生存
村の美女<俺の尊い命
俺が死んだら、村の女性たちが泣く。
だから俺は生きなければいけない。
「もう一度、チャンスをやろう。お前はこの魔王である俺の事を」
「愛しています!!」
俺が拳を掲げ、大声で怒鳴る。
拳を上げたつもりが、指輪を見せつける形になってしまった。
辺りを静寂が襲う。いや、ほんと誰もいないんじゃないかってほど、息をするのも忘れて王都にいる全ての人間が言葉を失った。
ああ、終わった。
俺は今日からホモ扱い。そんでもって魔王の恋人と勘違いされてしまう。
この変態魔王の事だ。すげえマニアックなことをいっぱい俺の身体にしたあと飽きてポイってされたら……村や王都の人たちから迫害されて野たれ死ぬんだ。
「救世主(メシア)だ」
ぽつり。
小さな声で発したのは、リーだった。
小さな声だったのに、静寂していたこの場では響き、ほとんどの者がリーを見た。
「魔王を愛で包み込むなんて、素敵だ。魔王もきっと彼の愛によって俺たち人間を襲うこともやめる。彼は、俺たち人間と魔王の血を一滴も流さないで世界を救った救世主だ!」
リーのクソみたいな勘違い演説のせいで、兵士たちが俺に跪く。
「グー。魔王さえ愛しちゃう、勇敢で優しいグー」
尊敬の目で俺を見るリーに、疑いながらもそれなら楽だと言わんばかりのユージン王子。
そして死んだ目の魔王が、そっと俺の肩に手を置く。
「これで分かったろ。俺はこいつさえいれば危害を誰にも与えるつもりはない。さあ、俺とグーの部屋を用意してもらおうか。触手城の世界の救世主を連れ帰って良いのであれば帰るが」
「すぐに用意しろ!」
機嫌が良くなった魔王に、顎を掴まれ強引に顔を覗きこまれて焦る。
男に触られても建国しない下半身。だが、指輪のせいなのか魔王に触れられると心臓が波打つ。
「グー、この王都でレベルを上げられよ」
「……まじっすか」
「レベル二のお前を抱いても面白くない。レベル100で、俺に勝てると勘違いし自信にあふれるお前を組み敷くのが当面の目標にする」
「最悪だ」
「お前、村に居る時レベル1じゃなかったか」
魔王が俺のレベルを見て首を傾げるので、俺はリーを指差す。
「王都に行くまで、リーが魔物を倒したら俺にも経験値がきたからレベルアップした。素早さが1あがった」
何もしなくても強いリーの隣で剣さえ持っていれば経験値もらえて楽だったなあと思いつつ魔王を見た。
「魔王のレベルは何? 53万?」
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