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三、まさか、最初の仲間が魔王だとは。⑤

……が。 その走りががやがて鉛のように足を重くさせた。 近づけば近づくほど、その女性だったと思った物体が大きく見えてくる。 遠近法で騙されていたんだ。 急に現れたその影は、ふんわりしたスカートに、肩が筋肉でパッツパツの男性だった。 リーやユージン王子が貧弱に見えるほど、屈強な兵士のような筋肉だ。 「わー、美形な男の子だわ、おいでー、食べてあげるわよー」 しかもおねえ言葉かよ。 行かねえよ。 後ずさった俺に、すね毛がスカートがたなびく度に見えるおっさんが近づいてくる。 「無理ー。女装きつすぎる。無理―」 「あらいやだ。こっちの姿に戻ってたのね、いやんいやん」 女装筋肉男はクネクネと身体を動かしたあと魔法の杖を取り出した。 が、その魔法の杖がどう見てもグロテスクな細いバイブだったことを此処にしっかりと明記させていただきます。 オカマはそのバイブを振ると、虹色の霧に包まれた。 そして霧が晴れた頃には、そこにはバイブを持つ美しい金髪の女性が立っていたのだった。 「女あああああ」 もう一日以上ホモの世界にいた俺は、目の前の美女を抱き締めたくて走った。 「そんなに女が好きなの? 私と一緒?」 「はあ、はあ……。おっぱい揉ませてください」 限界過ぎて、唐突にそのバイブを持った女に言うと、女も驚いたあと笑顔になった。 「じゃあ匿って。さっきガチムチの身体で女装してたら魔王が、粒々100パーセント触手を持って襲ってきたから、超逃げてきたのよう。あ、私、魔女っ娘のレイニンちゃん。よろしくね」 「よろしくお願います。とくにおっぱい」 両手をモミモミと動かして挨拶すると、レイニンちゃんは話を続けだした。 「それでね、魔王が襲って来たから急いで女体化して逃げてきたの。魔王ったら女性に全く興味がないからチャンスだったの」 「ふむふむ。それで」 そう言えば、魔王の地雷は女体化だったっけ。 俺はもう何十時間も女の子に触れてないから養殖でも触れたらなんでもいいのに。 「だから、魔王から私を守って」 「え、無理」 「は?」 「俺、魔王に服従の指輪嵌められてるから」 「じゃあおっぱい揉まないで。馬鹿じゃないの」 ドンっと突き飛ばされた。いくら養殖だと言っても感触はおっぱいだった。 「ここのユージン王子は?」 「美少年たちと乱交と言う名の銭湯」 「……勇者は?」 「それを覗きに行った」 「……碌な奴が居ないじゃない!」 美少女の姿で怒るレイニンちゃんは可愛かった。 可愛かったけれど、次の瞬間俺は後ずさった。 宴の入り口にゆらりと現れたのは、――魔王だったから。 「地雷を踏みつけて爆破してやろうと探していた。グー、そいつを羽交い締めにしろ」 ゆらゆらと真っ青な顔で魔王は、レイニンちゃんを見た。 そうか。本当に女体化が生理的に無理なんだ。じゃあ今弱ってるからやっつけようかって思うだろ? でも魔王ったら怒りで力を更にパワーアップさせてやがるの。 俺は逆らえずに、レイニンちゃんを後ろから羽交い締めにした。

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