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三、まさか、最初の仲間が魔王だとは。⑦

『脱ぎたてのパンツ限定って相当なマニアックさだな』 初代王子が、難しい顔をしている。 レイニンちゃんは引いているようだった。 しかし勇者だけはまっすぐ。ただただ真っ直ぐ。 真摯に魔王と向き合おうと苦悩しているようだった。 『俺は男を愛せない。俺には愛する人もいる』 まあ分かる。俺も超無理。 『だから魔王の気持ちは受けとめられないが、でもパンツぐらいなら』 確かに、男と両想いになりたくないが世界平和の為ならパンツぐらい安いわな。 『俺がちゃんと魔王ともっと向き合っていたら良かった。あの人はきっと誰よりも強いせいで、世界一一人ぼっちで孤独で凍えている人なんだ』 ……。 初代勇者は、ゲスな俺から見ても真っすぐで嘘のない、純粋な男だった。 もしかして魔王は。 魔王は200年前、勇者を本当に愛していたんだったりして――。 200年経った今も叶わない恋をしている、のか? レイニンちゃんのバイブを頭に当てただけでは、レイニンちゃんの記憶しか頭に入って来なかった。 顔も分からない200年前の勇者に、俺は不思議な魅力を感じてしまった。 『勇者、お前は一緒に死んではくれないんだな』 『……できない。それに俺は、俺を好きだと言ってくれた魔王、お前を殺せない』 勇者のすすり泣く声が聞こえた気がした。 『仕方ない。脱ぎたてパンツを貰った手前、大人しく封印されるしか、――ない』 死んでいく言葉が、遠ざかる靄の中に冷たく干からびていく。 200年前、勇者は力はあった。 なのに、魔王を封印できなかった。それは、一体――。 「おい。さっきから100回はキスしてるがグーが目覚めないぞ」 「止めてあげてください。もうグーの口が明太子みたいに腫れてます!」 「だが、王子のキスで目覚めるはずだろ」 「だったら本物の王子の俺がしようか?」 ざわざわと俺の耳元で、男たちがざわめく。 その中で唇を腫らしながら、俺は目覚めた。 「ふぉお、ひょぉひょ?」 「何を言っているのか明太子みたいに腫れた口では分からないっ」 目が覚めた俺は起き上がると、近くの窓に自分の姿を映した。 すると、唇が赤くはれて顔の倍以上に膨れ上がっていて醜い。 しかも頭には漫画みたいなたんこぶもできていた。 信じられない。 俺がこんな可哀相な姿になってるなんて。 「大丈夫だ。俺の唇のせいで腫れたなら、俺が治してやる。ほら」 魔王が格好良くマントを外し、投げ捨てる。 そして服を脱ぐと、なぜか準備万端な建国闇棒を握り俺の頬にぺちんと当てた。 「――――!?!?!?」 「いやんいやーん。魔王の息子さん、超でかい!」 「……ほう」 「グー、グー、大丈夫か!」 「これ、ここにキスしろ。すぐに治るぞ」 起きてすぐ、俺の世界は地獄だと悟った。 再び気絶し起きた時、俺の腫れあがった唇は治っていた。 何故治ったのか、リーは視線を逸らすしレイニンちゃんはぼっこぼこだし王子は椅子になった兵士の尻を叩いて遊んでいたので分からなかった。 ――知りたくもない。

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