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三、まさか、最初の仲間が魔王だとは。⑨

「おい、魔王! 今すぐ触手モンスターを土へ戻せ!」 バァァンっと勢いを付けて部屋に入ると、魔王が真っ裸にシーツをくるませてる、王道ホモシチュエーションで俺を待っていた。 シーツのラインから魔王の逞しい身体の輪郭が浮き出て、なんだか無駄に色っぽいと言うか、目は死んでるけど雄臭い色気がぷんぷんだ。 「俺と契るならば、その願いは聞き届けても良い」 「契るって、でも」 「俺はお前がいつ来るのか来るのか、建国闇棒を起たせて待っていた。だが日が落ちるとともに俺の建国闇棒は建国するのは止めて、陰毛の中に鎖国してしまった」 「その言い方やめろよ」 「俺の鎖国してしまった心を、触手が暴れて和らげようとしてくれている。あと数時間たてば触手の並みは王都に侵入。男たちは触手にあんあん言ってしまうだろう」 しかも、……男限定とか。 「辞めさせろよ。俺は別に数日ぐらい女でも」 「駄目だ。おぞましい。俺にはお前の女体化なぞ吐きたいぐらい無理だ」 お前、地雷原に俺を投げ込むのやめれ。爆発させんぞ。 「だから俺が呪いを解いてやるから、だから――いいよな?」 何百回もエロ本で見たことのある展開だった。 別に女に世話になって生きてきたつまらない人生だったから、もう魔王に身体を支えるぐらいどうでも良い気がしてきた。 けれど――。 「……一つだけ」 「なんだ?」 「200年前の勇者は、どうして無理やり抱かなかったんだ。パンツは奪ってたろ」 「パンツは貰ったんだ。脱ぐ姿がセクシーで、堪らなかった。ちょっと恥ずかしげな顔の後、俺を変態だと罵るときの顔、いいなあ。あの罵り顔を犯したかったなあ」 「話逸れてるから」 一人、思い出にたそがれてる魔王に、突っ込みを入れたら笑われた。 「俺が勇者に惚れていたからな」 零した本音。 その本音を零した顔は、一瞬だけ死んでいない輝いた目をしていた。 「俺、ちょっとだけ記憶が見えて……すげえ良い勇者さんだって思ったよ」 「おお、見たのか。良いだろう、あの正直で嘘の無い、純粋で汚れの無い――」 魔王は子どものように無邪気に言う。 「身体」 「心だろ!」 間髪いれずにそう突っ込んでしまった。 「性格は覚えてないけど、きっちりしてて真面目で、超A型だなって感じだったな」 「血液型診断はいいって。茶化さずに教えてよ。勇者のこと好きだった?」

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