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四、結婚式してみようかな。⑥

レイニンちゃんの記憶から、俺は真実を一つだけ知っている。 「弱みを見つけたつもりなのか、お前は先日からそこばかりチクチク攻めてくるが、問題ない」 「真実なんですか」 「200年前の話だ。もう居ない相手の事を俺は引きずらない。お前も忘れればいい」 魔王らしい脅しの言葉。 その言葉がなんだか弱々しくて、頼りない。 俺だけが知っている真実。 魔王はその昔、自分に初めて背いた人間に惹かれていた。 きっと恋とか愛とか言葉でその感情を表すには、200年経った今難しいだろう。 魔王の心には、今も200年前に会った勇敢な勇者の姿がそこにあるんだ。 「あんた、今から俺と結婚するって騒いでるらしいじゃん」 「まあな。お前は可愛いし面白いし、俺と対等で在ろうとして生意気だから」 縛りつけてみようと思ったんだ、と魔王は言った。 昔々の勇者に俺は言いたい。 アンタが魔王を病ませてしまったせいで、俺は囚われて、二の舞にならないように縛りつけられようとしてる。 でも本気で抵抗しようにも、変な情が沸いてできないのは、勇者のせいなのか。魔王のせいなのか。 200年前の勇者に会って言ってやりたい。 つまり、俺は二番目(?)の花嫁であって本命ではない。 そりゃあ、村の女性たちには未婚、未亡人、恋人あり、婚約者ありと色んな人たちがいたけど、女性だったらどんな容姿や年齢でも俺の生活を支えてくれるエンジェルたちだから愛したよ。 でも順番なんてつけられなかった。 誰かの代わりに抱いていたわけじゃないんだよ。 「うーん。うーうーん」 「どうした? 全然エロくない喘ぎだが、そんな喘ぎで大丈夫か?」 「喘いでないじゃん。どう見ても悩める美少年じゃないっすか!」 全く俺の美少年心の分からない魔王に、殺意に近い何かが沸く。 「俺、こんなに美形なのに200年前の勇者の代わり、もしくは二番目みたいな扱いなのは、可哀相だなって自分を自分で慰めてやりたい」 「だから、初代勇者などもう終わった話だ」 不機嫌そうに目を開けた魔王は、俺の不貞腐れた顔を見て面食らっている。 「でも、その勇者がわすれられていませんよね」

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