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四、結婚式してみようかな。⑦

「……あー、なるほど」 魔王は鼻をこすると満更でもない様子でにやにや笑う。 「まぁ、そうだな。今までの過程からしてそうだよなぁ。うんうん」 1人で何を納得してんだよ、気持ち悪いなぁと思いながらも聞きたくない。 のに、聞かねばならない。 「何でしょうか?」 尋ねたら、にやりと死んだ目で微笑まれた。 「勇者にヤキモチを妬いていたのだな。仕方ない」 「無理。まじ無理。それ勘違い」 と、心の中の言葉が漏れてしまった。 「怒るな怒るな。お前は顔だけは良いのだから」 「顔も良い、だよ!」 と結構がちの本音を言ったのに、魔王はどこ吹く風だ。 自分に都合の良い頭しやがって。 「ヤキモチだとしたら、勇者の事を忘れてくれます?」 面倒くさいながらも、その面倒な性格を利用させてもらう。 「俺が一番じゃないなら結婚しません」 「一番なら、結婚するのだな」 「まあ無理ですよ、この称号テクニシャンの俺でも一番は無理でした。いくらエッチが上手くても甘い言葉を放っても、身体で寂しさを埋めようとする人って大体本命の恋人や旦那には勝てないんです」 まあ逆に一番になりたいって思わない俺にとっては都合が良かったけど。 生きるために本命を作らなかった俺の美学が、ここで生きた。 「グーよ、言っておくが俺はこう見えて、心は童貞だ。お前が俺の一番大切なモノになってくれるのならば、俺は勇者のことは忘れる」 「無理無理。未亡人が一番、過去の記憶や思い出を大切にしますから。本当、無理ですね」 何かあれば、元彼のいい場所ばっか思い出して口論になり全然こっちの思う方へ進んでくれないんだから。 「では俺の魔法で勇者の記憶だけ消してしまおう」 「あれ? 勇者なんて好きじゃないって言ってたのに、記憶を消したいってやっぱり」 「……お前、むかつくな。触手で緊縛してやろうか」 「むかつくならば、結婚止めた方がいいと思いますよ。俺、三食昼寝付きが条件で、家事も仕事もしないテクニシャン型のヒモなので」 「でもたった一人、世界中で俺が憎まれても、お前だけは俺を愛してくれる、そうだな?」 いや、そんなすっげえ愛情なんて全く目の前の魔王には持ち合わせていません。 ただ、世界中が敵だらけで、たったひとりでも自分を愛してくれる人がほしいのだと、そう思っていることは理解できた。 それを俺が叶えてあげるわけではない。 叶えてあげれるものなら、あげたいけれど、流石に俺は無理だ。 生まれながらに女性に愛されて生きて行く天性のヒモ野郎だし。 「……アンタにもいつか本当に愛する人ができたらいいですね」 「だーかーらー、貴様がなれと言ってるんだ。その存在に」 「ひー首しめないで。触手で首閉めないで!」 ぬるぬる気持ち悪い。 「それとお前、話し方を統一しろ。変な敬語は止めて、もっとフレンドリーに話せ。フレンドリーに」 触手で首を絞めてくる魔王様に、フレンドリーに話せって拷問かよ。

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