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四、結婚式してみようかな。⑭

「そもそも恋人ではなく、俺の失言から絡まれるようになっただけの関係です」 「そうよねえ。でも、……ほら、言おうと思ってたんだけど」 「何です?」 「リカルドくんは、初代勇者の生まれ変わりとか転生とか言ったら笑う?」 それは転生系小説は溢れているので笑ってしまう。できれば無い方向でお願いしたい。 「で、君が初代勇者の最愛の人、女体盛りの美女、アザレアの生まれ変わり」 「いやいやいやいやいや、何、女体盛りって」 急に触手で頭を殴られた様な展開に突っ込み場所が分からない。 けれど、レイニンさんの顔はちょっと真面目だった。 「勇者の恋人が、永遠の美を保つためにって、夜な夜な美女を襲ってたのよ。それを知ってるから魔王も勇者の恋人が嫌いでさあ、で、あんがたその産まれ代わりって分かってるから、意地悪してるんじゃない?」 「……なんで?」   は! 勇者の恋人を、来世で寝取る。 つまり魔王の目的は、寝取られ!? 「恋人を取られた勇者を見て、興奮しそうよね、確かに」 うんうんと、レイニンさんは頷く。 ということは、ローは俺を襲いつつもその頭では、恋人を取られた勇者を想像しているってことか。 「転生じゃないから、前世の記憶が無くてよかったってことだな」 「貴方やリカルドくんには寝耳に水って感じかしら。200年生きてきた私たちにしか分からないのよ」 「え、レイニンさんは魔王の気持ちが分かるの?」 驚いて声を荒げた俺に、レイニンちゃんはしっと人差し指を立てようとしたが、間違って触手の鈴口に深く差しこんだ。 コードレス触手携帯は、死んだ。 そのただの触手になったモノを握りながら、笑う。 「悲恋ほど、後世に語り継がれ、美化されるでしょ。それって、忘れられないのよ。体験した人も、聞いた人も。ハッピーエンドより凌辱ENDの方が感想が多いのと同じよ」 全然違う。 ……だったらローは俺と結婚(?)したら、満たされるのか。 俺ではなく、結ばれない勇者の事を思って俺と結婚するのか。 この美形で、テクニシャンで世界中の女性のヒモである俺を、あて馬に使うのか。 まじか。すっげ腹立つ。 「レイニンさん、魔王を封印するか暗殺しましょう」 もう振りまわされたくない。 俺がローを倒したら、俺が魔王になるわけじゃん。 で、俺は世界中の女性に愛されるわけじゃん。 「勇者はどうしても彼を殺せなかったのよ。貴方にできる?」 「する。……したい。その、えっと封印はどんな封印するんすか?」 念のためだ。念のため、封印の方法も聞いておこう。 「まず、触手文で魔王を呼び出す。勇者の名前でね」 ここで触手語を勉強してないのでアウトか。 「で、のこのこやってきた魔王を、女性の剣士や魔女、騎士に際どい格好で囲んで士気を下げて、止めを刺す」 女性嫌いって部分を徹底的に攻める、意外とえげつない方法だった。

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