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五、魔王暗殺計画③
せ、説明を聞いてくれないか。
俺は善良なヒモで、女性を抱きたかっただけで、ポロンと今、魔王が出した邪悪な眠れる獅子を舐めたいがためじゃない。
なのに、俺は魔王から貰った指輪のせいで逆らえない。
「俺は、貴様と俺の愛の結婚式をぶちこわそうとするプリチー教を全滅させるためにやってきた。――が、妻の浮気現場に現れるとは思わなかったな」
「あの、その、大変言いにくいのでございますが、魔王ロー様」
俺は逆らえないのは逆らえないのだけど、それを前に絶望した。
「なんだ?」
「お、大きすぎて、俺の可愛いお口には咥えられないかと」
こんにちは、とピクピクするソレに、俺は挨拶とハグ、またはキスを拒否した。
異種生物との交流を全面的に拒否したかった。
俺の建国棒は完全に鎖国して心も皮の中に閉じこもってしまったし。
皮じぇねえ。心の殻だ。
一度咥えた時よりも、大きくなっておりませんでしょうか。
今度こそ、顎が外れてしまいます。
「そうか。仕方ない。強制させても可哀想だし、よかろう。咥えたくない戦争をしよう。今から、魔界とこの世界は全面戦争だ」
まじで? 世界を暗黒に染める戦争の理由が、俺が咥えなかったから?
「それは、自分の奴隷とか玩具とか、俺を軽んじてるからですか」
「何が言いたい?」
何って、舐めたくない一心で、目が死んでる魔王のなけなしの良心や、ぎりぎり病んでいない心の部分を抉ろうとしてる。
舐めたくない一心で。
「俺はどうせ、結ばれなかった勇者の身代わり。未だにその気持ちを消化できないから関係ない俺にセクハラまがいの酷い仕打ちをしてくるんですよね」
舐めたくない。
俺は、舐めたくない。
今、俺の挑発によってグググと頭を持ち上げてきた闇の剣を見ながら、心の中で必死で思っている。シッダウン、シッダウン!
めっちゃ頭をスタンダップされたソレは、臍に届きそうなほどそびえ立ってらっしゃる。
魔王さんったら、200年物なのに若々しい。
これは、此方がお怒りだということは、本人様は……?
本人様を見上げると、死んだ目のまま俺を見下ろしている。
何を考えているのか分からない。
「ツィーガネが、俺はお前を抱かないから、玩具として扱っていると言っていた」
まずツィーガネって誰だ。とは思ったけど、まあいい。
玩具として扱っていることも否定しない。
触手とかで色々酷い事してきたし。
「魔界の四天王も、俺の強さと残酷さにほれ込んでいるので、俺が何をしようと称賛するだけ」
「うんうん」
「ただただ気持ちを理解できなかったのは勇者だけ」
「えっと、あの、ローさん、すごく言いにくい事を言っていいですか?」
「なんだ、言え」
「ほっぺを凶器でグリグリしながら言わないでください」
グリグリグリグリされながら、俺は二重の意味で言いにくかったがお話した。
「もしや、勇者さまが初恋で、ローは人を好きになったことがないってことですか?」
「…………ないな」
「でも、ほら、セックスした相手はその間中は疑似でも、好きだって錯覚しません?」
「魔界では、俺が歩くだけで足を開いて待っている奴らばかりで、穴たちを疑似でも好きになる気持ちがわからない」
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