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五、魔王暗殺計画⑦
「ううう。辛い。美形に生まれてしまった故に悪魔に美貌を狙われ、私は辛い。身が焼かれるように辛い」
「あはは。ナルシストー。でも可愛いから慰めてあげる」
ユージン×リーヤー司教という薄い本が出来そうな展開に、リーはポカンとしていたし俺は呆れてみていた。
泣き喚くリーヤー司教から退いたユージンは、リーヤー司教を抱きしめて廊下へ消えて行く。
「……ハレムじゃないわ」
「じゃあ、自室?」
レイニンちゃんとリーの呑気な言葉に、嘆息する。
というか、えっと。
「魔王はどこ?」
見渡したが、ローの姿はない。
「えっ、俺たちがグーを発見した時は、誰もいなかったんだけど……」
「グイードちゃんの様子と、床に散らばった触手の残骸で魔王もいたことは察したわ」
「そうっすか……」
あれは夢だったか幻だったか白昼夢だったか。
どれかであってほしい。俺がローのあれをぺろぺろするなんて。
「ああああ!」
「どうした?」
リーが駆け寄ってくれたが、それどころではない。
俺のレベルが10ぐらいあがってる。
あと90竿で、テクニシャンの俺が腹上死を覚えるらしいし、レベル12になっている。
これはまさか、あれか。
魔王のちんこでも、倒せばレベル上がるのか?
本体を倒したら、すげーことになるんじゃないのか。
というか、10竿倒したのか、俺。
触手の甘い媚薬成分でとろとろになった記憶は、思い出したくない。
「あのー、すいません。上がってもよろしいでしょうか」
俺が頭を押さえて唸っていると、窓の方から声がする。
レイニンちゃんが、ぱあっと笑顔になって窓から空を覗いた。
「ええ。ええ。どうぞ、おあがりなさって!」
ここ、一応、俺の部屋なんだけど。
俺の部屋は窓が入り口になりつつあった。
「お邪魔します。マドモアゼル。今日もワインのように熟成された血が、美味しそうですね」
「いやん。ツォーガネさんになら全部あげちゃうわよお」
「いえ。私は熟成されたワインより、搾りたての美味しい血派です」
ひょこっと黒い羽を折りたたみながら窓辺に現れたのは、10歳ぐらいの少年だった。
ビー玉みたいにキラキラ輝いている緑色の瞳が、なんだか死んだ目の魔王とかぶってしまう。
「えーと、虫けら代表、グイード様は……あれですね。庶民的なレベルですし」
にこにこと笑顔でやってきたそのツォーガネとやらは、俺に手紙を渡してきた。
季節の触手は、鈴口から華が咲いている。
「魔王様が、貴方のために此方の世界の言葉で書きました」
「え」
ごそごそと手紙を広げてみる。
『魔王キトク スグカエレ』
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