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五、魔王暗殺計画⑧

「えっと……」 「お返事は?」 「あの、200年も生きてきた魔王が危篤なんですか?」 しかもなんで昔の電報的な、古風なメッセージなんだろうか。 「この文は、私が考えました。『グイードが自分に会いたくなるような、駆けつけてくれる様な文章を考えろ』と言われましたので」 「な、なるほど」 確かに駈けつけたくなるような文章かと言われたらそうかもしれない。 「グー、お見舞いにケーキと、あと果実詰め合わせ用意したよ!」 リーのこの慌てようからしたら、確かに文章的には正解だけど。 「虫け……グイード様」 こいつ、絶対俺のこと虫けらだと思っている。 「グイード様は、魔王様が200年、初代勇者を愛していると思っているのでしょうが、それは否定致しません。けれど」 ツィーガネさんは、ちらりと果実詰め合わせと、旅の準備をしてくれているリーを見る。 「ただ、その初代勇者に固執しているのであれば、魔王様は同じ魂であるリーさんを選んでいたでしょう。なのに虫け……グイード様を選びました。この意味を重く受け止めてあげてほしいのです」 「……やだ」 「は?」 美少年の顔が、思いっきり崩れる。目が点になって口が開いて間抜けになっている。 「だって重く考えろって、魔王を恋愛対象にしろってことだろ? 俺って女性なら未成年じゃなかったら二桁までいけるし。魔王を恋愛対象にしなくても――」 と言いかけて、何故か俺はリーに両手を握られていた。 「え」 「マリッジブルーなんだな」 「ま?」 「魔王との結婚を前に、マリッジブルーなんだな。辛い気持ちを分かってやれなくてすまない」 リーに抱き締められると、……ああ、なんだろ。 俺、なんか、リーの匂いに、やばい、くらくら、する。 「めっちゃ雌の顔になってますけど、虫けらさん」 ツィーガネさんが俺を虫けらと固定名詞として呼びだすと、俺とリーを交互に見る。 「つまり貴方は女性が好きだと言いつつも前世の恋人であるリーさんの雌の顔を見せているビッチと言うことでよろしいでしょうか」 「なわけあるか! リーはただの親友だ!」 「もしそうでしたら、結婚式は中止。その場合の慰謝料は膨大なものになりますよ」 人の話を聞きやがれ。 すると、また窓から招かざる客が入ってきた。 魔界から来た、魔王の伝書蝙蝠だった。 「おかわいそうに。虫けらからの返信が待ち遠しいのですね」 涙を拭いているツォーガネさんを無視して、新しい手紙を見る。 というか、俺の口であはんうふんしてから、絶対まだ24時間経ってないだろうになんで二通目なんだよ。 危篤の癖に返信とかおかしいだろ。 と思いつつ、かさかさ開く。 『スケベしたい すぐカエレ』 「直球だな!!」 こっちの方が分かりやすいわ! 手紙を覗きこんだリーが、頬を染めて気まずげに視線を逸らしたのはちょっとムカついた。 「季節の触手が、ないな。手抜きだな」 「で、どうされます? 戦争か結婚か」 すげえ重たい二択を突きつけられた。 世界を守るのは、勇者に任せて俺は楽をしたい。

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