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五、魔王暗殺計画⑮

「だからね、俺たちは最初は何もかも未熟でしょ。ご飯を食べたいから手を伸ばす、声を上げる、立ち上がる。自分を良く見せたくて、服を選んだり、鍛えたり、髪を整えたり。未完全だから、努力するんだ」 「ほうほう」 「でもきっと魔王は、どーゆうの知らないんだよ。生まれたっ時から何もかも手に入ってて、努力する必要が無い。だから世界は退屈で、寂しくて、あんな目をしちゃうんじゃないかな」 「……」 リーは、「少し休憩しよっか」と馬から俺を下ろして、水を差し出して来た。 リーは、前世の記憶がないのに魔王の事を良く見ている。もしかしたら、魂に魔王への気持ちが刻まれているのかもしれない。 俺よりも、魔王の事を理解しているし、理解しようとしている。 だからこそ、魔王もリーを、200年も忘れられなかったのかもしれない。 「リー、あのさ」 「うん?」 「魔王は200年も同じ人を思ってたんだ。200年って、どんぐらい果てしない時間なんだろうな。俺の一生四回分だぜ」 俺は若いうちに死にたいから、敦盛の舞いのように40歳で死ぬ予定だし。 それでも四回分なんてきっと果てしない時間だ。 俺は、俺の人生四回分の思いであるリーを越えられるのだろうか。 「リー、俺さ、お前を侮ってた」 「ん? 餡ドーナツ?」 前言撤回しようか。 「俺、最近お前を見るとトゥインクルトゥインクル胸がときめくんだけど、それってお前が前世でも今でも、格好良いからだろうし」 そういいつつ、きつくなった胸部分のボタンを外す。 実は、先日散々、本当に散々魔王にイかされてしまい、男の精をこれでもかと吐きだしてしまったせいで、ただいま俺の身体は女体化してしまっていた。 「な、グー、な、なんで服を脱ぐの!?」 肌蹴た胸が、巨乳だったのでリーも焦っている。 が、女性になった今、俺の目の前に居るのは恋愛対象になってしまうリーだ。 女体化できるようになってから、すげえリーを意識してしまってるんだ。 「まあ、聞いてくれよ。俺は魔王を理解したいわけだ。あんな悲しい瞳、みたくねえし」 「え、う、うん」 「だから魔王をよく理解しているリーをまずは理解してやろうかなって」

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