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五、魔王暗殺計画二十二

「ちょうど、この魔界に冒険する話が長くなりそうだったので、巻きでお願いしようと思っていたところだったので、こうすることにしました」 「へ?」 「四天王を纏めて此処で召喚! 私のターンは終了。これで場に全て放出です」 いや、なんで城で待たないんだよ。 なんで一斉に四天王が門の前に現れるんだ。 「紹介しましょう。天候を操ったり、草で鞭を作ったり、森の魔獣をはべらすケンタウルスの祖とも言われるこの方、腐界の森を統べる男『ドン・ドリル!』因みに人外、獣姦など特殊プレイ好きよ」 ツォーガネさんの説明に一応は拍手するが、得意げに現れたそいつは、見たら100キロ先には逃げ出したくなるような屈強な筋肉に、蹴られたら即死してしまいそうな馬の身体をしていた。 「次は前に言ってたやつ、深海の堕天使、男の人魚、マーマン!やつは人肉ではなく男の精なる液を喰らうホモ! 沈む船の中、男だけを捉え寝床に監禁するホモ! ガチムチは嫌いな美少年好きよ」 めっちゃ詳しい説明に、俺のガラスの心は砕けそうだった。 「次に、森のたたり神と恐れられる、蜘蛛男、名前はスパイダリン! 森の奥で浚った男と番、色んな人外生物を生み出してるらしいわ。人外攻め好きの特殊性癖よ」 いや、被ってる。ドン、ドリルと設定被ってる。 「四人目は――私、と言いたいところですが、他の三人には到底敵わない非力でか弱い吸血鬼なので辞退させていただきますね」 ツォーガネさんは幼い見た目とは裏腹に、大人の、余所行きの取り繕った上品な笑顔で誤魔化す。 誤魔化したところで、俺には分かる。 きっとツォーガネさんは、魔王を倒した後に出てくる本当のラスボスみたいな力を持っているはずだ。 「よって、空から見下ろしている、エンリーお兄さまが四天王の中で一番の最弱。フロアで言うと一階いる感じの人です」 「兄に酷いな」 見上げると、黒い羽が明るい空の月にかかっている。 その翼は六枚。肩や足に不自然に包帯を巻いている。 「お兄さまー! その中途半端な中二的なファッションで『俺の罪は許されない――』と自分の肩を自分で抱いて苦悩してみてくださーい!」 それ、某ツイッターで流行ったやつだ。 馬鹿にされたであろうエンリーさんは、ツォーガネを睨んだまま降りてくる。

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