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五、魔王暗殺計画二十四

「……えっと」 「走れ、グー!」 四人の前に立ち塞がるリーは、すごく格好良くて。 思わず『抱いて』と飛びつきそうだった。 「グイード様、ページの都合もありますし、行きましょう」 「え、ああ。リー! 尻は守れよ!」 「ああ、背後は気を付ける。敵に背中は見せない!」 そうか。 掘る側だろうしな。 俺は後ろ髪が全くひかれないまま、ツォーガネさんと一緒に魔王がまつ城へ向かったのだった。 「ツォーガネさん、俺レベルまだ30ぐらいなんですが」 「あれ、1ケタじゃなくなってるのですね」 「ああ。リーが倒すたびに、ちょこっと経験値貰ってたから。で、俺一人で魔王の城まで大丈夫?」 レベル30の俺が、いきなり一人でラスボスの城へ向かうなんて。 「一応、今日は結婚式の衣装合わせなので、私が守ることにしますが……結婚後此処に住む場合は大丈夫ではないですね。平均レベル70の魔獣と変態だらけです」 「魔獣も怖いけど、変態も怖いなあ……」 だが歩いていると、モンスターに全く遭遇しない。 「魔王様が、グイード様は弱いが顔と身体は美しいので、なるべくモンスターに遭遇しないようにと追い払って下さったんですよ」 「……そうだったんですか」 「ほら、馬車まである」 道の先に、大きな黒い馬が四匹と、真っ黒な馬車があった。 「乗って行きましょう」 「えっと、俺、色々ツィーガネさんに聞きたいんですが」 「なんですか?」 あどけない少年みたいな笑顔で俺を見るが、視線を逸らしつつ答えた。 「魔王って、その、いつからなんな」 「変態なのか?」 「や、まあ変態なのは変態だろうけど、いつから勇者のことを好きなのかって」 女々しい俺の発言に、ツォーガネさんが不思議そうな顔をする。 「あの、例えば、父親を好きと思う気持ちと、恋人を好きだと思う気持ちって違うでしょ」 「はい」 俺は親父嫌いだけど。 「グイード様が女性を皆、平等に愛すように。魔王様は、『勇者』だから興味があるんです。生まれ落ちた瞬間から、世界最強だった魔王様を唯一倒せる、対となる存在だから。特別と言えば特別だし、愛しいと思えば愛おしいだろうし、パンツをほしいのだと思います」 後半は全く理解できない。 「なので、貴方と結婚したいという愛と、自分を倒せる勇者を愛でる気持ちは、次元が違うので比べたら可哀想では」 「うーん」 「グイード様は、顔だけ良くて下半身ゆるくて、ゲスでニートでレベルが低いくせに自己評価は高いのですね。貴方みたいな凡人以下は、性奴隷ぐらいが関の山のはすが、――魔王は貴方をこんなにも必要としてくれているのに」 せ、……。 見た目が子どもなんだから、恐ろしい言葉を聞きたく無かったよ。 「やはりもう、自分の目で魔王様の愛を感じられてください。さ、エレベーターはこちらです」 「え」 馬車から降りて城の前に行くと、エレベーター直結で魔王の部屋で向かう。

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