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六、浮気じゃなくて①

「ちなみにその恰好でいくのでしょうか?」 俺の女体化された身体を見て、ツォーガネさんは渋い顔をした。 でも、仕方ないのだ。俺の男の精は、先日絞り出されてしまっていて、それが回復するまで先日の呪いに支配されている。 「魔王は、『俺』を必要としてくれるなら、身体が女でも俺が来たことに喜んでくれるはずだ」 「……そうですけど、性欲と愛情は別であってもその、違いが」 何かぶつぶついっていたが諦めたのか頷く。 「まあ、良いでしょう。お二人の問題だし」 エレベーターの戸を開けると、ツォーガネさんは乗りこまなかった。 「あの……」 そして閉まる前に、少しだけ視線を彷徨わした後、視線をそらして言う。 「ベッドサイドのテーブルに、スキンと潤滑剤を置いておきましたので」 「何してくれてんだ!」 何してくれてんだ! つい心の声を叫んでしまった。いや、ほんと。 何をしてくれているんだ。 「貴方の頑張りで世界は破滅か天国がに導かれるんです」 プレッシャー辞めてくれ。 「では、グッドラック」 ツォーガネさんは、親指を卑猥な感じでポージングさせたままその形で手を振る。 エレベーターを見ると、果てしない。135階が頂上らしく俺はもうただただ諦めて上を見る。 このエレベーターが着いた先で、あの悲しい顔をしていた魔王と再会する。 (さっき門の前であってしまったのはノーカンとして) どうしたものか。 どんな顔をしたらいいのか。 散々身体を弄ばれて、――気持ち良くなってしまって理性なんて壊されて。 それなのに違う男を思っている魔王。 どんな顔をしている? どんな顔をしたらいい? 近づくにつれ、喉が渇いて胸が苦しくなった。 今すぐ、帰りたい。 ぐにゅぐにゅと考えても、答えは出ない。 無慈悲にも、135階に到着してしまい、エレベーターは開いたのだった。 ギャェェェェ 「!?」 魔獣の断末魔みたいな声と共にエレベーターが開く。 すると、そこには『魔王の部屋』と分かりやすく書いた案内板と、歩くスペースがないってぐらいの宝箱が置いてあった。 これは、あれかな。 近道したせいで本当は城中に置いてあるはずの宝箱をここに集中させたのかな。 試しに一個開けてみると、高級魔道士の服だった。 魔法は使わないので、別のを、と開けると――バイブだった。 それはソッと締めてエレベータに投げつけた。 が、次の宝箱は、ナース服、次の服はビキニアーマー、次の服は葉っぱ一枚、次の服に至っては鞭。 「ろくなのねえな!」 しょうがねえから、ボロの服の上からビキニアーマーとはっぱを装着し、手には鞭と二個目のバイブを持ち、魔王の部屋をバイブで開けた。 「あっ」 「え?」 開けたそこには、宝箱に今にも際どいボンテージ服を入れようとしている魔王の姿があった。

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