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六、浮気じゃなくて③
そういうと、ベッドの上に飛び乗って、手を後ろで組んだ。
「きょうー! おれはー! 言いたいことがあってー、この場にある人をー、呼びました―!」
そして、叫んだ。
「だーれー!?」
ツォーガネさんが、大声で聞いている。
これって、若い子は知らんかもだけど、学校○行こうの、屋上で告白の奴に似てるんだけど。
「ミギサイド出身、グイードくん」
「きゃー!」
パフパフと、ツォーガネさんが良く分からない楽器を叩く。
が、いつの間にこの人来たんだ?
「俺と―――――――――――!」
「え、え?」
「スケベしよ――――――――――――!
「ええええええ!?」
「きゃー!」
ええええ!?
「さ、はやく、お返事を」
ツォーガネさんに促されるが、俺の身体は震えていた。
歓喜ではなく憎悪でもなく、激怒で震えていた。
力が……力が欲しい。
こいつらを塵さえ残さずぶちのめす為の力が欲しい。
「……大変です。グイード様が、進化しています」
「Bボタン連打だ」
俺はポケ○ンでもない。
「まず、魔王。てめえ、ベッドから降りろ」
「なぜ?」
「そんな近い位置で叫ばれてもうるせえ。人に告白するなら同じ目線で告白しろ」
「グイード様、その発言は学校○行こうを全否定されていま」
「ツォーガネさんも、屋上から飛び出す予定だった触手たちも、悪いけど出て行ってくれ。俺は魔王と二人で、ちゃんと話しあいたい」
今のアレを、告白だと呼ぶなら俺は魔王をこの身が朽ちても、ぶん殴りたい。
ツォーガネさんたちは、渋々入り口から出ていくが、盗聴触手を置いて行ったので135階の窓から投げ捨てた。
「……グー、俺は結構練習したんだぞ」
「ふざけんな」
「……」
ギャエェェと、魔獣の雄叫びのような開閉の音を聞きながら、俺はローを睨みつけていた。
世界一目が死んでいて、世界最強で、何かあれば触手を出してくる上に、勇者が大好きな魔王。
「グー。はしゃがないと、今すぐ勇者を殺してしまいたいぐらいには、俺も焦っているんだ。許してほしい」
「は? なんでだよ。お前は勇者の方が好きだろ?」
俺が尋ねると、魔王は首を横に振り辛そうに顔を歪めた。
「もし、リカルドとグーが『抱いて』と足を開いて来たら、俺は間違いなくグーを選ぶ」
「ロー……」
「だから、お前が魔界に来ると聞いてから、安全なように、盗聴触手や盗撮触手、そして体温を感知する医療触手を尾行させてたのだが……グー」
魔王は冷たい目で俺を見た。
「此処に来るまでにリカルドにときめいた回数を俺は理解している。お前はどうなんだ。勇者と魔王、どちらが好きか?」
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