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六、浮気じゃなくて④

「リーのことは、友達として好きだよ」 「前世、恋人同士だったのにか?」 なんで付き合っても居ないのに、言い訳しないといけないんだ。 「俺はホモじゃねえから! 好きになったのは今、女体化中だからだ! だから」 「だから男の体になったら、素直に俺を好きになるのか?」 ローの色っぽい声に、思わずときめく。 「今度は媚薬でとろとろにするのではなく――俺がとろけさせてやる」 「で、でも。俺」 「嫌なら、邪魔な勇者を今すぐ殺す。俺とグーの間に重い障害になっている勇者と言う存在を今すぐ消してやる」 死んだ目で言われると説得力がある。本当に勇者をころしてしまいそうだ。 今は四天王を一人で相手して戦っているリーだ。 魔王が行けば、勝敗は明らかだ。 「……今の心臓の音は、勇者を心配する音だ」 「細かい! ねちっこい男は嫌われるぞ」 「――ベッドの上では大歓迎だろ」 満足げに笑ったローは、俺の手を取り、ベッドにそのまま倒れ込む。 そのベッド、さっき靴のまま上がったベッドじゃねえか。 汚い。 一瞬嫌がって身を捩ったが、魔王の行動に固まった。 女体化中の俺の胸を鷲掴みしやがったからだ。 「……邪魔な胸だが、グーのモノだと思うと少し可愛いな」 「ひゃ、んっ……っ」 まじかよ。 魔王の分際で、さ、触ってんじゃねえよ。 「グー。俺は200年間恋愛をしてこなかった。恋愛音痴だ」 「わ、分かってる」 「逆にお前は村中の女を喰ったヤリ○んだ」 「すげえ言い方だな」 だけど、服の上から触っていたのに、そっと服の中に手をいれてくる。 魔王の手が、遠慮なく俺の胸を掴んでいる。 「……俺に恋愛を教えてくれ。俺はもう、お前が女でギリ我慢する。我慢できなくても速攻で呪いをといてやる。パンツもいらない。おまえだけでいい」 俺だけでいい――。 「で、でも俺、この年まで働いたことねえし、もう定職にもつかないだろうし、性欲人一倍あるし」 「俺の花嫁に永久就職☆だ。それに喜べ。俺の性欲は世界一だ」 「へ、変な触手、いやだし」 「今すぐ全部殺してもいいぞ」 魔王の意思は、触手よりも硬そうだ。 信じていいのだろうか。 そして俺も。 「ときどき、リーにきゅるんと胸がときめいてたのは認めるけど、襲おうともしたけど、でも」 でも、魔王が俺だけでいいと言うなら、良いんじゃないだろうか。

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