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第156話

春side ふとした瞬間に感じる、笑顔の奥にある苦しみ。 俺が泣いてはならない。 そう思うのに、なぜか胸が熱くなり涙が溢れそうになる。 その涙をこぼさないよう必死にこらえる。 本当に辛いのは俺じゃない。 郁だ。 背中の重みと暖かさ。 絶対に壊してはいけない。 「…ねぇ、、春」 泣いて、掠れた声で俺を呼ぶ。 「ん?」 「…呼んで、、僕の…名前。」 その郁の言葉によって、抑えていた涙が溢れた。 「…っ…いく…郁…郁!」 「うん…ありがとう」 なぜそんなことを聞いたのか。 俺にはわからなかった。 こんなに自分は弱かっただろうか。 もっと強いと思っていたのは勘違いだったのか。 本当は脆くて呆気なく崩れるような心だったのだと、改めて気付かされた。 もっと、もっともっと。 強くなると誓う。 肉体的、精神的、経済的。 他にもまだまだある中で。 『幸せ』という言葉を探して。 苦しみの中で、泣くのは今回が最後。 次に流すのは、嬉し涙だけ。 現在だけじゃなく未来を決めないとな。 大きく息を吸って、吐き出す。 あと1年と少しの高校生活。 俺は何を選ぶのだろうか。

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