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第158話
郁Side
あの日から数日間は部屋を出れなかった。
家に帰ろうと試みたが、部屋を出ようとすれば、身体が震えて、外部との接触を拒絶しているようだった。
平気なフリをしてみても、身体は恐怖を覚えてる。
自分自身が情けない。
1日目はお母さんがそばにいてくれて、春は心配しながらも学校へ向かった。
次の日からはお昼休みに春が戻ってきてくれて何とか精神を保った。
「あー、土日休みだー。」
「ごめんね」
「謝んない。悪いことしてないんだから。」
「…でも」
「いいから。…前にも言ったと思うけど、迷惑だなんて思ってないから。気にしなくていいよ」
「…」
「俺が忘れ物して連れ出したのが行けなかったんだからさ、お互い様だと思っとこ?それじゃダメ?」
「春は悪くない!!」
「じゃあ、俺も郁も悪くない。全部あいつのせい。…な?」
「……。」
「真羽と俊に合うのは怖くない?」
「大丈夫…」
「なら明日は一緒にゲームとかしよっか。連絡しとく」
「え、でも」
「大丈夫。あいつらなら。」
「そ、っか。」
「…おいで。」
手を広げ、ここに来いと示す。
少しだけ躊躇すれば、腕を引かれる。
「どれだけ時間がかかろうと、俺は待つよ。何度でも郁に合わせる。絶対置いていくことはないから。」
「…ご、…ありがとう。」
謝りかけてやめた。
今いうべき言葉はこれじゃないと思ったから。
謝罪ではなく感謝しようと。
「うん。」
温もりによって、眠気を誘う。
今僕がすべきことを改めて考え直しながら、ウトウトとする。
「このまま寝ていいよ。」
そう言われてすぐ僕の意識は夢の中。
春の言葉ひとつで僕のすべてが変わる。
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