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第164話
郁side
リビングを出てお母さんたちの寝室に来ていた。
お母さんがベッドに腰かけ隣に空いたスペースをポンポンと叩き座るよう促してくる。
そっと近寄り座れば、母が少しの間を埋めるように寄ってくる。
「苦しくない?」
その第一声を理解できず、「え?」と声を出す。
「郁と同じ体験をしたわけじゃないから、すべてを分かってあげることはできないけど、それでも、郁の辛い気持ちを軽減してあげることはできる。だから、何でもいいの。郁の思っていることを教えてほしいな」
まるで、何もかも見透かされたような気分だった。
「……苦しかった、、」
そう一言、苦しいと言ってしまえば、タガが外れたように思いがあふれてくる。
「うん」
「……寂しかった。」
「…うん」
「いつか、、いつか居なくなっちゃうんじゃないかなって、怖くなった」
「…そうだったんだね、ずっとそばにいるよ」
「………けい、べつされて、、捨てられる、って思った」
「軽蔑なんてしない。現に春も真羽君も俊君も、郁のことを心配しているから気にかけてくれているんじゃないかな。」
「…うん」
「……怖い?」
「うん。……みんな優しいから。」
「……」
「春にね…」
「うん」
「聞けないの…怖くて……」
「うん」
「…春とは、いろんなことを打ち明けて隠し事がないようにしてきたんだけど………今回ね、、お母さんにはばれてたけど……少し前には記憶を思い出してた。……でもこのことを話すには、どうしても春のことを知りたかった。春の心が読めなくて春自身も辛そうだった。」
「そうだね」
「だから、僕のそばから離れてたほうがいいのかなって思ったり」
「そっか。でも、春はそれを望んでないよ。」
春だからそんなこと思うはずないってわかってたけど、信じれなくなっていた自分が憎い。
複雑な思いとともに、涙もあふれる。
「ほーら、赤くなるから。擦っちゃダメ」
「……っ………うぅ…」
「ちょっと待って」
そういって棚からタオルを取り差し出してくれた。
「、、ありがとっ……」
「落ち着いたら、戻ろっか」
「うん」
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