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第166話
※2部に突入いたします。
郁side
あれから、数ヶ月経過し、短い春休み真っ只中。
もうすぐ高校三年の春が来る。
記憶が戻ったことをうちあけたあの日から僕は、モヤモヤとした気持ちが晴れ、少しづつ自分の心を、体をコントロールできるようになっていった。
そして何とか学校に通えるようになり、現在は春休みだが年間の欠席が多かったため、補習を受けるべく、学校へと毎日足しげく通う。
相変わらず春から離れることはできず、あれ以来さらにひどくなった気がしないことも無い。
春休みの補習へ「ついて行く」って言ってくれる春に申し訳ない気持ちを持ちつつ、甘えて一緒に補習を受けてもらっている。
補習という言葉に無縁で関係のない春がいることは先生の了承済みで、僕にとって先生が二人いるみたいだ。
色々あった日々から数ヶ月で、やっと日常生活はほとんど普通に過ごせている。
しかし、僕は進路をどうしようか不安でいっぱいだった。
改めて言うが、明宮高校は理数系の総合学科だ。
文系がいないことも無いが、みな理数系の大学志望。
だからこそ、医療の道を選ぶ者が多い。
僕は何になりたいのかわからない。
春は実家から通うために地元の関石大学の医学部を受験すると言っていた。
頭もよく、あの性格だからきっと皆に好かれるんだろうな。『あーあ……僕の彼氏なのに』と先のことに嫉妬する。
僕はほとんどオープンキャンパスなどに参加してこなかった。唯一参加したのは、一年の時に学年全員参加で行った県内の国立大学だった。
僕は単に子供が好きだからという理由で保育士や幼稚園教諭になるための教育学部に行った。
でもいざ決めるとなれば、『誰かにものを教える』という教育学は僕には適していない気がした。
ふらふらしていた僕に対し、その時すでにうっすらとではあったが、進路を決めていた三人。
もちろん言うまでもなく、春、真羽、俊だ。
春は医学部を見に行っていたし、俊はスポーツ心理学、そして真羽は自分の行きたい学部がここにはないからということで適当に選んで、とある教授のセミナーに参加していたはず。
俊はあの時から理学療法士になるべく、地元の専門学校や大学短大のオープンキャンパスに参加していた。そして二年の夏休みには、医療系の短大に行くと決めていた。
真羽に至っては、親から医療系の専門学校があることを教えてもらいオープンキャンパスに何度か足を運び「ここにする!」と早いうちから決めていた。
三人ともやりたいことが明白で、正直のところ羨ましい。
やりたいことも無く、そういうこと考える自分が不甲斐ない。
早く決めなければ対策すらできなくなってしまう。
上手くいかないことへの苛立ちと焦りを感じる。
僕が好きなことは?
将来どうなりたいんだ.......。
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