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第170話
春side
あと数日で4月。
そんな中で寮のある敷地が一段と賑やかになる週を迎えた。
続々と1年寮に荷物が届けられ、敷地内に人が増えていく。寮全体の雰囲気も明るいものへと一気に変わる。
初々しさ溢れる1年生の姿を見ると入学したての頃が懐かしく思った。
4月に入り1年だけ参加のの入学式があり、その日のうちに教科書やら必要なものが配布される。
そしてその次の日に2、3年生の始業式と全生徒参加の集会。
本当なら始業式も集会も出席番号で並ぶよう言われるが、俺と郁はその集団から少し外れた隅へ座っていた。これは言わずもがな、郁の体調へ配慮した結果だ。
集会は体育館で行われ、はじめの校長の長話が終わると、生徒の中には欠伸をしたり、首を揺らしながら眠気に耐えている後ろ姿が視界に入り苦笑いしそうになりながら、人間観察を続けて集会の終わりを待つ。
隣の郁に腕をつつかれ、意識が現実に引き戻される。
「ねぇ、春。頭痛い」
少し顔色が悪く、呼吸も浅い気がする。
「外に出よ」
体育館の入口付近にいた先生に体調が優れない旨を伝え、外へ出る。
常勤の先生であれば俺たちのことを知っているので、いちいち深く聞かれなくて済むのはありがたい。
郁の薬の管理は、郁の意思で俺がするようになった。病院で処方された痛み止めを自分のポケットから1錠取り出す。
ありがたいことに体育館には3台冷水機があるので、それで薬を飲む。
「少しは落ち着いた?」
「たぶん」
ふーっと大きく息を吐き出し、ゆっくり深呼吸をする様子を隣で見るのには慣れてしまった。
5分ほど経って、集会が終了したのか一斉に生徒が出てくる。
「動けそうなら、保健室行くか?」
「大丈夫。もう少ししたら治まりそうだから。」
「なら、教室戻ろうか」
「うん。」
生徒の流れがポツポツとまばらになり、先生たちも出てくる。それぞれの先生に大丈夫か?と声をかけられながら、教室を目指す。
1学年上がったことにより教室は1つ下の階になった。
席は1年の時と変わることなく、郁は窓側の後の角でその隣が俺だ。
「お、戻ってきた」
俊の声が聞こえて顔を向けると「おはよぉー」と緩い真羽が挨拶をしてきたので同じように返す。
「体育館出てから声かけようかと思ったんだが、教室戻ってからの方が良さそうだって思ってさ。大丈夫か?」
「さっきより平気になったよ。心配かけてごめんね」
「気にしなーい、気にしなーい!僕らが勝手にやってることだから」
「次の時間なんだっけ?」
「教室で何かするって言ってなかった?」
「何かって。」
「進路希望の紙の配布と模試受験のマークシート書くんじゃなかったか?」
「俊さすがだね。」
「面倒くさそうだな」
「だねー。」
そんなことを言っていれば先生が入ってくる。
「ほら、席つけー。じゃあ、号令はいいから早速始めるな。事前に言ってのでみんな知ってると思うが進路希望と模試受験をこの時間はやってもらうから。早めに終わったら自主学習な。」
サラッと始まった授業は後半のほとんどをおしゃべりタイムと化していた。
「よーし、もうすぐチャイムなるから昼休憩にもう入っていいぞ。」
ほぼ休憩時間と変わらない状況だったからか、担任は早めに授業を終わらせた。
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