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第171話

郁side 3年に上がり2週間が経過した。 その間に保健室登校から通常通り教室で授業を受けれるよう体を慣らした。 2学期の最後や春休みも来ていたこともあり、3学期に入ってから割と早く普通の生活に戻れた。 1日学校にいることは、精神的に疲れが出てしまうが、みんなとこうして過ごせる事が、なによりも楽しかった。 お昼の休憩時間には学食を食べた後、校舎の中をぶらぶらと散歩するのが日課になっていた。 そんなときだ。 「これが僕の彼氏だから‼︎」 廊下を歩いていてすれ違った瞬間、突然だ。 何が起こっているのかわからないまま、痛くない程度に腕を両手でぎゅっと捕まれてしまった。 痴話喧嘩のような言い合いが聞こえたため、ちらっと目線を向けはしたが、巻き込まれる要素などこれっぽっちもない。 「お前なんかと付き合うわけないじゃん!バーカ‼︎」 僕が呆然とした状態でもなお会話は続く。 「お前だってどうせほかに付き合ってるやついねーだろ!?」 「そんなんお前に言われたくない!」 春の顔を横目で見ると少し動揺していたが、すぐに冷静になり「君は誰?」と僕の腕を掴んでいる子に尋ねた。 ネクタイやシューズの色からして1年生だと分かる。 「久瀬和叶です!!」 喧嘩している相手に向ける口調のままに、目線すらこちらに向けず、春にそう名乗った。 「わか!!知らん人を巻き込むな!」 相手は相手で怒りによる興奮は冷めそうもない。 声のボリュームをもう少し下げてもらえるとありがたいのだが、ヒートアップしていくため、廊下にいた人たちはもちろん教室の中にいた人たちも興味本位でドアから顔をのぞかせている。 「郁、この間の子だよね。相手の子を連れてって話するから、そっち頼んでもいい?」 僕の腕を掴んでいる子は気づいていないみたいだが、この間寮で会った子だと春も分かったのだろう。 こそっと耳元で話して、相手の子の腕を掴み廊下をズンズン歩いっていった。 「え、うわ、、ちょ、ちょっと!!」 一年の子の焦った声が聞こえるが、春は気にせず進んでいった。

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