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第22話
暁side
結果から言うと運が良かった。
40代の店員は俺にも聞こえるようにスピーカーにしてくれた。
電話が繋がった瞬間、留守番電話に切り替わるだろうと考えていた俺と40代の店員は驚いて顔を見合わせた。
普通に電話が繋がったからだ。
「・・っもしもし!明宮高校事務室です!」
相手は少し焦った様子で出た。
もしかしたら今日に限って事務員がいたのかもしれない。
店員さんは俺を見てどうぞと言った。
「もしもし、飛青高校の1年田澤暁です。そちらの生徒で室井春さんは今いらっしゃいますか?」
「生徒の個人情報ですのでお教えすることはできません。」
「生徒の自主退学または自殺が待ち受けていたとしてもですか?」
「えっ?」
「あなたの学校から自殺者が出てもいんですか?」
ゆっくり且つ大きめに言った。
相手は相当慌てている様子だった。
「脅されているので警察への電話はしないで下さい。する場合は室井春がしてくれと言った場合のみしてくださって構いません。まずは彼を出してください。彼には全てを話します。奏芽の兄弟だと言えば分かるでしょう。後、この番号は他人のケータイをかりてるので意味ないですから。」
「少々お待ちください!」
そう言って軽快な音楽が流れ始める。
隣の店員は先程以上に驚いた顔をしていた。
いつの間にかすぐ側で聞く耳を立てていた若い店員も驚いていた。
そりゃそうだ。
自殺だの暴力だの、先程から言っていることは物騒な言葉ばかり。そういう顔をされてもおかしくない。
俺は黙ったまま電話から人の声が聞こえてくるのを待った。
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