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第174話
春side
予鈴が鳴りだし、慌ててそれぞれの教室へ戻る。
その途中、郁と会いとりあえず大丈夫だと伝えたら、「よかった」と一言だけでほかは何も言わなかった。
午後の授業はなんとなく意識が別の方へ向いて集中できなかった。ノートを取っているから後々の心配はいらないだろうと判断し、集中するのを諦める。
隣の郁を横目で見れば、先生の話を聞き、頷きながらノートを書き進めていく。ポイントを細かくマーカーや吹き出しをつけたり、一生懸命工夫をしている姿はとても可愛らしい。
日差しが窓から差し込んで暖かく、昼食後ということもあり、だんだんと眠くなっていく。
とりあえずこの授業が終われば、次は体育。
この眠気も無くなるはず。そう思いながら、意識を手放していた。
ハッと目が覚めた時には「きりーつ」と号令係が声をかけた瞬間で、慌てて立ち上がれば、郁がくすくすと笑った。
授業と授業の間にある短い休憩。
2クラスで体育は行われるため、俊や真羽と廊下で合流する。体操服を抱え、体育館へ移動中。
「珍しくよく寝てたね」
郁からのその言葉に反応したのは真羽だ。
「え、寝不足?」
「いや、そういうわけじゃないけど。お腹いっぱいだし、日差しがちょうど良くて…」
「あー、わかる!僕も眠気耐えるので必死だよ」
「それで、さっきの授業はうつらうつらしてたわけだ」
俊に痛いところを突かれ、真羽は笑いながら目線をそらした。
「図星」
「みたいだな。」
ゆっくり話しながら歩いているうちに授業開始までの時間は残りすくない。
「時間やばい。急いで着替えないと」
腕時計を確認した俊がそう呟いたので、急いで更衣室へ駆け込む。周りのクラスメートはほとんどが着替え終わりそうだ。
それぞれロッカーを自由に選び荷物を入れる。俊と春は半袖、郁と真羽はその上からジャージを羽織る。
4月にもなればジャージを羽織らなくとも動けば暖かくなるが、体温が少し低めの郁と真羽からするとまだ寒いようだ。春がジャージの上を着ないことをわかっているので郁はあえて自分の上を寮においてきて、春のものを着ている。
「…また俺の?」
「使わないんでしょ?」
「そうだけど。」
「ならいいよね」
「僕も俊の着ようかな」
「真羽はダメ。体格的に郁よりブカブカになるのが目に見えてるし、それで怪我したら危ないから、ね?」
「はぁーい。」
「さ、早く行くよ」
俊の一声に頷いて体育館へ向かった。
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