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第175話

真羽side 帰り道、今日は1人で寮へと戻る。 「ただいまぁー」 窓の外や廊下はみんなの話し声で賑やかだ。 一歩、部屋に入れば誰もいない静かな空間。 パタンとドアの閉まる音。 ふぅっと息を吐き出すと寂しさを思い出す。 「…今日は何時に帰ってくるの?」 この気持ちを紛らわすために独り言をつぶやく。 その言葉は空気の中に消えていく。 「大丈夫?」と声をかけて欲しい人はここにはいない。 靴を脱いで、ベッドにダイブする。 目頭が熱くなって次々に涙が溢れていく。 俊が人気なのは当然だ。 頭が良く、かっこよくて、生徒会長もしてて。 彼氏持ちだと知る人が少ないことも。 頭では分かっている。 けれど、こればっかりはどうしようも無いのだ。 もうすぐ生徒会長の任期が終わるため、次期生徒会メンバーへ引き継ぎをしなければならない。 そのためお昼も放課後も生徒会室。 忙しそうにしているから、かまって欲しいなど言えるわけない。 生徒会が終わっても受験が待ち受けているのだから自分も頑張らなきゃいけない。 気持ちの切り替えができない自分にイライラする。 情けない。 しばらく枕に顔を押し付けて、落ち着けるよう深呼吸を繰り返す。 「……よっし。反省終了!!…勉強しよ」 勉強に集中していれば、余計なことを考えずにすむ。 俊を信じて、時間に余裕ができるまで我慢するだけ。 それだけの事。

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