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第176話

春side 翌日放課後。 コンコン 部屋をノックされ「はーい」と答えれば、「こんにちは」と俊がひょこっとドアを開けて覗き込んできた。 「なぁ、寮の入口にあの子来てたけど」 俊の言うあの子とは昨日のあの件だろう。 「なんか話したの?」 「後で来ますって。」 来るとはここの部屋にってことか。 けど伊吹くんから連絡は来ていない。 「郁、ぐっすりだね」 「あぁ。帰ってきてすぐ30分ほど寝るから起こしてって」 「そっか。じゃあ少し話しあるからまた夜来る。」 「ん、分かった」 「じゃ」 俊は要件だけ述べて自分の部屋に戻って行った。 明日の課題を数問解いていると、起こしてと言われた時間になっていた。 「…いーく。おきて。時間になったよ」 「…う、ん」 「大丈夫?」 「だいじょーぶ、昨日少し寝れなかっただけ」 「授業も眠そうだったしな」 「うん」 「今日は一緒に寝ようか?」 「…うん」 「りょーかい」 「あ、はる。ふたりくるけどいい?」 「ふたり?いいけど」 「ありがと」 郁を起こしてから数分後、コンコンと控えめなノックが聞こえた。 「どーぞ」 カチャと静かにドアが開いて「失礼します」と硬い声が聞こえた。 「「おじゃましまーす」」 「若干散らかってるけど気にしないでね」 「あ、えっと、いえ!僕達の部屋の方がもっと散らかってるので」 「まだ片付いてないの?」 「そうなんです。どこに置くか決まらなくって」 「あー、わかるー」 うんうんと頷く郁に、ここの部屋来た時悩みに悩んでいたなーと思い出す。 「とりあえずここじゃ何だから、中入って座って話せば?」 「あ、そっか。どうぞどうぞ」 部屋の中央にあるテーブルにそれぞれ座り、郁がコップとオレンジジュースとお茶を持ってきた。 「どっちがいい?」 「じゃ、じゃあ、オレンジで」 「お茶をお願いします」 2人の前へ飲み物を置くと「春はお茶だよね?」と聞かれ「あぁ」と返事した。 「どーぞ」 「ん、ありがと」 4人はとりあえず飲み物に口をつけ、一息吐いて、顔を上げそれぞれ目を合わせた。 「それで?」 昨日の事だと予想はつくが、話始めるように促す。 「…改めて、昨日はすみませんでした。とりあえず親と話しました。」 昨日の今日で伊吹の行動は早いなと思った。 「どうだった?」 「なんでもっと早く言わなかったんだと、言われました」 「だろうね」 思ったより低い声が出て、2人がビクリとしてしまった。 「かたくならないでいいよ?」 あまりにも緊張している様子がおかしかったのか郁がくすりと笑った。 「ちゃんと2人で話してこなかったから、曖昧にし続けて和叶を傷つけてたことにも気づきませんでした。先輩たちにはほんとに感謝です。」 「僕らは特に何もしたつもりは無いよ?話聞いて、自分の話しただけだし、2人揃ってこうやってきてくれて嬉しかった。」 「…ありがとうございました」 「いえいえ」 ゴタゴタが片付いたあとは、学校生活や勉強のことを話して笑い声が廊下にもれるくらいには賑やかだった。

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