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第32話

春side 郁の眠るベッドの横で手を握って、早く起きてほしいと願う。 するとコンコンとノックされドアを見ると郁の両親が立っていた。 「俺がいながら、すみませんでした!!」 すぐに立ち上がって頭を下げた。 「顔をあげて?…君が謝ることではないよ。それに君は今もこうしてずっと郁のそばにいてくれているだろう?それだけでこちらとしては感謝の気持ちでいっぱいだよ。」 「春くん。大丈夫」 父親の了さんからの言葉に涙目になってしまった俺を陽太さんが優しく抱きしめてくれた。 本当に郁の両親には頭が上がらない。 あの時も、「郁のことが好きならば、ずっとそばに居てやってほしい」そう言われただけだった。 2人は本当に優しくて温かい人だ。 そして2人は郁のそばへ行くと郁の手を握ったり頬を撫でたりした。 すると了さんが俺を見て口を開いた。 「1つ、聞いていいかな?」 「はい。」 「春くんは、これからどうしたい?」 「…これからですか?」 「あぁ。」 「……郁と笑って過ごしたいです。俺は何があっても郁とずっとそばに居たいと思ってます。どんなことも郁と立ち向かっていきたいです。」 「そうか。それだけ聞ければ今は十分だ」 コンコンと2度目のノックが聞こえて「失礼します」と医者が入ってきた。 「どうも、円谷といいます。冬城さんの応急処置をさせもらいました。」 「郁の母と父です。ありがとうございました。」 「いえいえ。……冬城さんですが、目が覚めるまでは入院しましょう。起きてからは何も異常がなければ退院しても大丈夫です。」 「わかりました」 「…冬城さんは心に深い傷を負っています。先ほど少しだけ室井くんに言ったのですが、過度のストレスなどによって起こるパニック障害や過換気症候群に陥ることがあると考えられます。」 「パニック障害…」 「はい。パニック障害は体にどこも悪いところがないのに、動悸や胸が締め付けられるようなパニック状態に陥ることです。まずは起こらないことを願うのが1番です」 「はい。」 それから点滴とかについては看護師から説明があるとか言ってた気がする。 そのあとは曖昧だ。あまり覚えてない。 あっという間に医者が出ていったのは記憶にあるが……。 早く、郁の目が覚めないかなー。 郁の笑顔がみたい。

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