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第37話

春side それから郁は、ぼーっとどこか遠くを見るように外を眺めていた。 面会時間は7時までで今は6時だからまだ1時間はある。 郁のことを陽太さんに任せて、真羽と俊に郁のことを伝えるために電話のできるナースステーションのそばのスペースに向かった。 LINEのグループ通話を使って2人に電話をかけるとすぐに繋がった。 「もしもし?そっちどう?」 「あ、真羽?俊は?」 「俺もここいるよ」 「そか。」 「郁は?」 「記憶喪失。」 「えっ。」 「それ大丈夫なのか?」 「医者曰く、日常生活を過ごしていけば少しずつ戻るだろうって。」 「そっか…」 「どこまでの記憶がないんだ?」 「中学の時、奏芽に出会う前まで」 「えっ!?」 「郁に学校学年聞いたら達川中学1年だったいうから。」 「そんな…」 「…今は郁のお母さんが郁のこと見てるのか?」 「あぁ。」 「退院は?どうなるの?」 「明日、検査して異常がなければ退院だって。だから明日次第。」 「郁、学校とかどうするんだ?」 「とりあえずは身体の痛みもあるだろうし、家で休養。環境に慣れたら学校とか考えればいいかって陽太さんとさっき話したところ。」 「そうか。」 「今どんな様子なの?」 「記憶喪失って聞かされた時は焦ってたし混乱してたけど、すぐに状況理解して今は妙に冷静になって考え込んでる。」 「春、支えてやれよ。」 「ん、わかってる。」 「何かあったら言ってね。できる限りはするから!」 「ん。」 「またこっち戻ってきたら教えて」 「了解。…あとさ、夕食いらないから伝えといてくれるか?」 「うん、わかった。」 「んじゃ、俺戻るな」 「うん。」 そして通話を終え一息ついた。

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