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第51話

郁side 通話を終えたのは9時を過ぎた頃だった。 真羽が「やばい!明日提出の課題終わってない!」と言うのをきっかけに「いい時間だしそろそろやめるか」と言う話になって終えたのだ。 ふぅー。 ここ最近で1番笑った気がする。 まだ頬の筋肉が緩んだままだった。 たくさん話したから喉が渇いて、一階のリビングに降りていく。 「…郁、おかえり」 先ほどお風呂から出て来た様子のお父さんがそう言ってくれた。 「ただいま。お父さんこそ、お帰りなさい」 「ただいま」 「それで、どうかしたの?」 「みんなと話してたら喉、渇いちゃって」 「そっか、座ってて。オレンジジュースでいい?」 「うん。」 「楽しかったみたいだな?」 「うん!はじめは春と話してたんだけど真羽もいるよって春が言うから、話したいなぁって思って。それから春と真羽と真羽の彼氏の俊と一緒にみんなで話してたんだ!」 「はい、郁。よかったね、みんなと電話できて」 オレンジジュースを持ったお母さんがそばに来てコップを渡してくれた。 「ありがと。うん!すごく楽しかった、明日も電話してくれるって」 「そうか、よかったな」 「うん……でもね、事故で何があったのかわからないけど、はやく思い出したい。さっき俊のことがわからなかったから春に聞いたら友達だって……俊はね、前みたいに仲良くしてくれるっていってくれたけど…なんか、嫌で……みんなとの思い出も思い出したい」 「郁、焦る必要は無い。焦りは禁物だよ?」 「…うん。」 「ゆっくりでいいから、ね?」 「うん。」 さっきまでの楽しさとは裏腹に、焦りと寂しさを感じていた。

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