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第62話
郁side
お母さんと春がなんの話をしているのか耳を傾けてた。
すると「おやすみ」と話し終え、僕に変わった。
「…春?」
「ん?」
「ありがと」
「感謝されるようなことは何もしてないよ。…これからは俺でも陽太さんでも了さんでも、真羽や俊でもいいから、ちゃんと言って欲しい。そういうのはわがままとかじゃないから。自分1人で抱え込まなくていんだよ?」
「うん…」
春の優しさに涙がこぼれそうになる。
そんな僕を見て、お母さんはポンポンと一定の早さで背中を叩いた。
「今日はしっかり寝なよ?」
「うん」
「明日ちゃんと会いに行くから」
「うん。」
「…大丈夫?」
「大丈夫。」
「ん。じゃあ切るな?」
「ありがと」
「ん。おやすみ」
「おやすみ、春」
電話を終えて、ケータイを持った左手をそのまま膝に下ろす。
右手はずっと保冷剤を包んだタオルを目元に当てたまま。
ふぅっと一息吐けば、お母さんから声をかけてきた。
「一緒に川の字になって寝よっか。」
「え?」
何を言われているのかわからなくて聞き返した。
「お父さんと郁と3人で。」
「うん。」
目元の保冷剤を外れば、お母さんが顔を覗き込んできた。
「うん、さっきよりはマシかな?…よし、寝よう」
そう言って保冷剤は冷凍庫へ戻しタオルは簡単に畳んで机の上に起き、僕の手を引いてお母さんたちの寝室へ向かった。
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