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第70話

郁side 買い物に出かけようとしたはいいけど、外暑い… なんて思いながら車に乗り込む。 「暑いねー。冷房かけよっか。」 「そうだね。」 すぐ近くのスーパーまで5分くらい車を走らせた。 「…郁、大丈夫そう?」 「うん、いく。」 「ダメそうになったら言ってね」 「うん。」 店に入るとカートにカゴを置き、押しながら次々と食材を入れていくお母さんの腕をぎゅっと握ってついていく。 やっぱり少し怖いからうつむいて歩いてしまう。 「大丈夫?」 「うん…」 お母さんは何度も聞いてくれた。 気を紛らせるために話しかけてくれたりもした。 けれどもどうやっても周りに対しての警戒心が強くなってしまって話に集中できない。適当な返事しかできなくなってしまう。 お母さんは最終的に1つのカゴにいっぱいいっぱいの材料を入れた。それでも10分も経っていないと思う。 僕のことを思って早くしてくれたんだと思う。 レジはどこも混んでいて、セルフのレジで淡々とお会計を済まし、大きめのマイバックに詰めて早足気味に車に戻った。 「顔、真っ青。大丈夫?」 「うん、なんとか…」 「無理しなくても良かったのに」 「ううん、いいの。」 「…お疲れ様」 そう言って頭をポンポンとしてくれた。 その後、家に帰って部屋に入るまでは体に力が入りっぱなしだった。 リビングに入った途端、一気に体の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。 どっと疲労感が押し寄せる。 「大丈夫!?」 「…うん……なんか、力が抜けちゃった」 「…ほら、立てる?」 そう言って腰に手を回し、立たせてくれた。 「ソファにでも横になって少し休んだら?」 「うん、そうする。」

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