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第73話

春side 放課後のホームルーム終了のチャイムが鳴る。 号令と同時に荷物を持って急いで階段へ向かう。 「春、はやっ!」 「急げー。あ、あっちの階段の方が空いてるから」 そういうと2人は頷いて普段使う階段と逆の階段から駆け下りる。 靴箱は予想通り混み合っている。人と人の隙間を通って自分の靴を履き替え後ろを振り返れば、まだ2人は人がいて履き替えるのを待っているようだった。 「先に行くから!」 そう声をかけて、寮までダッシュ。 部屋まで駆け上がって、時計を確認する。 16時22分。 少し余裕がある。 部屋に入って呼吸を整え、昨日寝る前に準備しておいた少し大きめのカバンに今現在背負って帰ってきたリュックからペンケースやルーズリーフなどの必要なものを入れ、カバンのチャックを閉めた。 すると真羽達も帰ってきたらしく隣の部屋からガタンと音がした。 カバンを持って制服のままで、部屋を出ると真羽たちも出てきた。 「春、足、はやっ。知ってたけどね?けど、速すぎ。」 呼吸を乱しながら真羽が言った。 「真羽が体力ないだけ。」 「知ってる!運動してない人よりはマシだけどね!」 「なぁ春。食堂には行ったのか?」 「あ、やべっ。」 食堂に土日の食事がいらないことを言うのをすっかり忘れていた。 階段を駆け下りて食堂に行き、早口で「室井春です!土日の食事全部いりません!」とだけ伝えると「あいよ!」とおばちゃんが返事してくれた。 それを聞いてから待ち合わせをしている寮の正面玄関へ向かった。 時計を確認するとまだ30分にはなっていなかった。 だが既に陽太さんと郁は来ていた。 「すみません!遅くなって。」 「いいよいいよ!まだ30分になってないでしょ?」 と陽太さんが言ってくれて安心したのと同時に郁が俺の胸に飛び込んで来た。 「春…」 「郁?俺汗かいてるから…」 「いい。」 少しの間抱きしめあっていると、後ろから真羽の声がした。 「…あー!郁!」 「…!真羽っ!!!」 「元気ー?」 「うん!」 郁は俺に抱きついたまま会話をしてるが真羽の隣に立つ俊を見て俺から離れた。 「…えっと、冬城郁です。」 そう言ってペコと頭を下げた。 「あ、あぁ、波輝俊です。よろしくな?」 「はい!よろしくお願いします」 2人は電話で会話をしただけだったので、改めて挨拶を交わした。 「郁の笑顔が見れてよかった!安心した!」 「真羽、迷惑かけてごめんね。」 「いいよ!迷惑なんて思ってないし。」 「ぎゅーってしていい?」 「うん!」 手を広げた郁の胸に真羽が飛び込んだ。 「あー!郁だぁー!久々ー!!かわいいー!!」 「な、何言ってるの?真羽の方が可愛いよ?」 「ううん、絶対郁!」 「そうかなぁー?」 「…よし!充電完了!」 そう言って真羽は郁を離した。 「充電?」 その言葉が面白かったのか郁はクスクスと笑った。 「うん。…今日は郁の顔見れてよかった!」 「僕も真羽と俊に会えてよかった!会えると思ってなかったから」 「そうだね。…また顔見せてね!」 「うん!」 話を終えた後、陽太さんの車の後部座席に郁と並んで座った。 寮を出るまで真羽と俊が「バイバーイ!」と手を振ってくれてた。 郁はニコニコと嬉しそうで、真羽と俊に今日会わせてよかったと思った。

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