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第78話

春side お風呂を出て郁の部屋に戻って時計を見れば1時間近く経っていた。 「時間…経つの早いね」 「あっという間だな」 郁は棚の上に置いてあるドライヤーのコードをコンセントに挿し、俺に「後ろ向いて?」と言った。郁に背中を向けるようにして座れば、後ろから心地よい風が吹いてきた。 「やっぱり暖かい風じゃないから乾くの遅いね」 夏に暖かい風で髪を乾かすのは部屋に冷房が入っていたとしても暑い。 「まぁ仕方ないよ」 俺の髪を乾かしてくれた郁と交代する。 郁のくせっ毛はふわふわしてて触れているのが気持ちいい。 乾かし終わる頃に玄関から「ただいま」という声が聞こえた。 了さんが帰宅したのだとわかって、郁と俺は一階に降りて「お帰りなさい」と言った。 了さんは着替えるために二階へ上がって行った。 リビングに行けばご飯のいい匂いがした。 陽太さんがキッチンで夕食の準備をしていた。 「もう少しでできるから」 「うん。」 「ありがとうございます」 「あ、春くん。」 「はい?」 「洗濯物出しといてね。まとめて洗うから。」 「いいんですか?」 「一枚や二枚増えたところで変わらないからね」 「すみません」 「全然大丈夫!」 そこへ着替えを済ませた了さんが降りてきた。 「春くんがいるだけで郁は随分と明るいね」 「そうなのかな?」 郁は自覚なしというように頭を傾けた。それを見て了さんと会話を聞いていた陽太さんが笑った。

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