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第82話
春side
郁をベットに下ろし、部屋に冷房を入れてタオルケットをかける。
呼吸は安定しているし、怖い夢を見ている様子もない。
少しだけ郁を眺めて、一階に降りた。
まだ9時にもなってない。
そのせいなのか落ち着かなくて寝れなかった。
リビングに入って椅子に座れば陽太さんがアイスココアを作ってくれた。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
「…郁次第だが、家にずっといるよりは春くんと過ごした方がいいような気がするな。」
「えっ?」
「そうだね。」
郁は俺と居るより、家族といた方がいいと思ってた。だからそういう風に了さんから言われて、陽太さんもうんうんと頷いて居るのを見て、一瞬戸惑った。
……郁はどうしたいのか。
「まぁ明日は休みだ。その時にでもちらっと聞けばいいだろう。」
「そうね。」
「……そういえば、春くんは夏休みの間、家に帰ったのかい?」
「あ、確かに。郁は帰らないって先に連絡あってそれっきりだったけど春くんは?」
「俺も帰ってないです。」
「明日、顔だけでも出しに行って来たらどうだい?」
「いいんですか?」
「司季さんが春くんの顔見たいって言ってたよ」
「えっ。母さんがですか?」
「うん。」
「郁と話してから決めます」
「うん。春くんの好きなようにすればいいよ」
「はい。ありがとうございます」
それから、真羽の話になった。
了さんと陽太さんには真羽のことを中学から知ってる。よく俺たちは3人で遊んでたから。
「そっかー。真羽くんも彼氏できたんだー。よかったよかった!」
「陽太さん、多分知ってますよ?俺を迎えに来てくれた時に真羽の他にもう1人デカイのが」
「あ!あの子!ちょっと怖そうだけど、郁と話す時少しだけ膝曲げて話してた!」
「陽太さん、よく見てますね。気づかなかった」
「背が高い分驚かせてしまうこともあるからねー。ほんとすごいなぁーって思っちゃった。」
「ぜひ俊くんにも会ってみたいものだな」
「また会えますよ、きっと。」
「そうだな」
笑顔に包まれたリビング。
しかし、それはとある音で一気に静まり返った。
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