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第88話

春side 次に目を覚ました時は、先ほどよりも部屋の中に差し込む光が眩しくなっている気がした。 真横を見れば郁はいなかった。 と言っても本当に居ないわけではなく、少し目線を落とせば布団を頭からかぶった郁の膨らみがある。 少しだけ布団を上げてみれば、スースーと寝息を立てて眠っている。 布団を戻して、手探りでケータイを見つける。 画面を見れば今は7時。 郁が起きるまではもう少しゴロゴロしていようと思った。 けど、トイレにも行きたい。 我慢しようとしても生理現象には逆らえない。 郁を起こさないようにそっと布団から出た。 一回に降りればリビングからはテレビの音が聞こえた。 トイレに行ってその後にリビングへ向かう。 ドアを開けて「おはよーございます」と声をかけた。 「春くんおはよー。ゆっくり寝れた?」 「…おはよう」 身支度を済ませ、ソファでコーヒーを飲む陽太さんが声をかけてきた。隣には頭が起きていない様子の了さんがいた。 「はい寝れました。郁も夜中起きてない様子でしたよ」 「そっか、よかった。…あー、了のことはスルーしていつもこんな感じだから。郁はまだ寝てる?」 「…あ、はい。」 「だろうね。あ、朝ご飯食べる?と言っても食パンしかないんけど。」 「うーん、郁が起きてからにします。」 「いつ起きるかわからないよ?」 「それでもいいです。」 「そう?」 「はい。……郁が起きるまでそばにいます。」 「うん。わかった」 そして郁のもとへ戻った。 ゆっくりと部屋に入ると、布団の膨らみがゆっくりと上下するのが見える。 何もすることがないのでベットの淵に背中を預けてケータイを開く。 最近ログインすらしていなかったパズルゲームをすることにした。

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