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第89話

郁side 意識がだんだんと浮上して久々の長い眠りから覚める。けれどまだ寝ていたくてもぞもぞと動いて体勢を変える。 手探りで横にいるであろう人物に触れようとする。 トントンと布団をたたくようにしていると手を握られた。 ゆっくりと瞼を開けると布団が目の前にあってガバッと体を起こせば、春が「おはよ」と微笑んだ。 「…おは、よ」 「…ふはっ…」 春が肩を震わせて笑い始めた。 まだ頭がぼんやりとしているから春が笑っている理由がわからず首をコテンと傾けた。 「ん?…寝癖、と…くくっ……頬にシーツの形がついてる…」 「…ふぇ!?」 「くっ…ふぇってなに…ふぇって……」 春はさらに笑い始めた。 「…もう笑わないで!」 「ん、ごめんごめん、わかったって」 「…うぅー髪直してくる。」 「ついでに朝ご飯食べよう」 「あ、うん、お腹すいた!」 僕はゆらゆらと揺れている寝癖を気にしつつ階段を降りていき、その後ろで春が僕にバレないように隠して笑っている気配がした。

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