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第92話

郁side 外に出れば日差しが暑い。 じわじわと汗をかいていくのが気持ち悪い。 春と手を繋いで少し引っ張られるように斜め後ろを歩く。 人とすれ違うだけで怖い……。 すると春が立ち止まった。 「…春?」 こちらを向いた春は顔をのぞきこんできた。 「少し顔色悪い」 「え?あ、大丈夫だよ?」 「無理はしないこと」 「う、うん」 「途中にあるコンビニに寄りたいんだけど…」 「だ、大丈夫!」 「無理そうだったらすぐ言ってな?」 「うん!」 春は自分のカバンからパーカーを取り出した。 「郁、これ着てな?暑いかもだけどUVカットのやつだし、フード被ってれば少しはマシかと思って」 「…ありがと」 「ん。じゃあ、いくか」 そして歩き出した。 少し歩けばすぐにコンビニが見えてきた。 幸いなことにコンビニには店員と1人の客しかいなかった。 春は適当にお菓子、レモンティーとグレープフルーツジュースを買っていた。 僕はほとんど俯いていて何を買ったのかあまり見えていなかった。 コンビニを出ると、春がグレープフルーツジュースをくれた。 ひんやりとしていて、その上さっぱり。 いいチョイスだと思った。 そして春はさっきより早歩きをし始めた。 僕の顔色はそんなに悪いだろうか…。 しんどいけれど、先ほどと変わらない。 なぜだか春の家がすごく遠くに感じた。

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