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第94話
春side
室井家は5人家族。
俺は寮だし、兄貴は一人暮らしをしてるはずだから、この家は実質3人暮らしのはずだ。
「えっ。兄貴いんの?」
「一緒に住んでるんだから当たり前でしょ?」
「はい!?えっ?一人暮らししてんじゃないの?」
「あら、言ってなかったっけ?一人暮らし宣言した後、真冬と離れるのは辛いからってやめたのよ。」
「まじか…」
今日、兄貴と顔を合わせるとは思ってなかった。兄貴と俺は性格が多少似ているからか、よく口喧嘩をする。
階段から降りてくる音がする。
それと同時に玄関のドアが開く音がして、「ただいま〜。律夏、どうかしたのか?」と言う親父の声が聞こえた。多分兄貴がなんかしでかしたんだろう。
2つの足音がリビングに近づいて来て、ガチャっとドアが開いた。
「あれ?春と郁くん。春、今日帰ってくるって言ってたか?」
「うげっ。春、なんでお前いるんだよ。」
「あー、いろいろあって。」
ほんと賑やかな家族だと思う。正直なところ真冬と母さんは置いて親父と兄貴が揃うとうるさい。
「ゆっくりしていきな」
「あ、うん。そうする。」
そう言いつつ親父も机を囲む俺たちの横にある椅子に腰かけた。
「なぁ、絆創膏ない?」
「何したの?」
「本が足に落下して来た。」
兄貴が足を見せて来た。見事に青アザと一部血が滲んでいた。
「ご、ごめんなさい!!僕が本増やしすぎたからっ!」
そう言って真冬が慌ててテレビの横の四段ボックスから絆創膏を一枚取り出し手渡した。
「別に真冬が悪いわけじゃないよ。俺が当たっただけだから。」
兄貴は真冬の頭をワシャワシャと撫でる。
相変わらず、兄貴は真冬に甘い。
…まぁ当たり前といえば当たり前か。
この世に女という生物がいなくなってから兄弟同士での恋愛も可能になった。
その1組が真冬と律夏。
そう、この2人は親公認の兄弟同士で付き合っている。
俺はこの2人のピンクオーラにため息を吐いた。
そして先ほどの兄貴の言葉を思い出しよくよく考えたら疑問が生じた。
「……ん!?……質問!!なんで真冬の本が兄貴の足に落ちたわけ?一緒の部屋じゃないだろ?」
俺たち三兄弟の部屋は二階にあって、俺と兄貴で一つの大きい部屋を使ってて、その半分の大きさの部屋が真冬の部屋になってたはず…今年の正月までは。
「あー、そっか。春に言ってない事もう一つあったわ。」
母さんが「ごめんごめん」と笑いながら言う。
「なにを?」
「律夏と春が2人部屋で使ってた部屋を真冬と律夏の部屋にしたの。それで、春の部屋はもともと真冬が使ってた部屋!」
「…へぇー。そう言う事。」
「だって春いないし、2人とも付き合ってるのに1人部屋ってどうかと思ってね。」
「うん、まぁ確かにね。」
「でしょ!」
なんか、家に帰ってきたんだなって実感した。
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