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第100話
春side
陽太さんに言われた通り郁の服を脱がし、顔や上半身の汗を拭き取っていく。
「大丈夫?」
「…うんん」
郁は目元に手を置き「うぅー」と唸っていた。
「気分悪い?」
「……ん……気持ち悪い…」
「吐きそうな感じ?」
「…うん……頭痛…」
「頭も?」
「…うん」
郁の声が震えていた。
「大丈夫大丈夫。」
郁の目元からつぅーっと涙が流れた。
「春くん、郁どう?」
郁の服を持ってきた陽太さんが聞いてきた。
「吐き気と頭痛がするみたいで」
「…いつものパターンかなぁ?」
「そうかもですね。」
郁が体調を崩す時、ほとんど吐き気と頭痛を起こす。これは寮の一緒の部屋で暮らしていく中で知ったことだ。
普通、風邪を引いたら熱とくしゃみと咳が出るが郁はそれにプラスで吐き気と頭痛を引き起こす。そのせいで高校1年の冬にトイレの住人になりかけたことがあったのをふと思い出した。
「郁ー!とりあえずこのままでも風邪引くから服着よー。すこしだけ体起こせる?」
陽太さんがすこしだけ声のボリュームを上げて郁に言う。
郁はもそもそとゆっくり体を起こし服を着て、またパタンと転がる。
「病院いく?」
「……うんん…」
「それなら少し寝たら?少しは治るかもよ?…寝れる?」
「……多分」
郁がふらっと身体を起こし立ち上がろうとするので、支えてやり郁とともに郁の部屋へ向かった。
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