102 / 201

第102話

郁side ここは……? ……どこか暗い場所にいて必死にドアを叩いてる誰かがいる。 君は……僕? なんでそんなに必死にドアを叩くの? 手には血が滲んで痛そう。 だけど全然痛くない。 「……た……っ!!」 なにか叫んでるけど聞こえない。 どんどんそこから遠のいていく。 待って! なんで僕はそこにいるの? なんでドアを必死に叩いてるの? なんで1人なの? なんで泣いてるの? 何を叫んでるの? ハッと目を開けた時には、僕は自分の部屋にいた。 さっきの君は僕なの? 状況整理ができてない。 夢はいつも忘れるけど、今回は鮮明に覚えてる。 眠る前と同じように春が手を握っていてくれて、その手にギュッと力を込めた。 「…ん?…郁?」 「……はる、怖い」 そう言えば春は僕を抱きしめてくれた。 「怖い夢でも見た?」 「……変な…夢、見た」 「… 変?……大丈夫だよ」 春の鼓動を聞いているうちに焦っていた自分が落ち着いていく。

ともだちにシェアしよう!