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第104話
春side
多分中学のあの時のことを示しているのだと思う。
それを陽太さんも理解したのだろう。
だからこそ驚いて俺を見た。
郁の記憶が夢の中で思い出されていくのではないかと思った。
「……ねぇ。……こういうことって、無かったよね?…僕は覚えてないから」
そうゆっくりと言った郁になんて答えればいいかわからなかった。
それは陽太さんも同じようで目を合わせて困った顔をした。
沈黙を破ったのはどこかから帰ってきた了さんだった。
「……ただいまー。ってどうかしたのか?」
「まぁ、その、いろいろと。了さんはどこに出かけてたんですか?」
「本屋さんにちょっと。」
手にもつ袋を少しだけ上げて見せた。
「そうだったんですね。」
「それで?何があったの?」
「えっと…」
陽太さんが今あったことを話した。
郁の意識はここではないどこかにあるようで、ぼーっと話している俺たちを眺めていた。
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